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. 結婚なんかしたくない 6
~Cside~
「坊ちゃん、気を確かに!!」
「チャンミンしっかりしろ!!」
フラフラとその場にしゃがみ込む僕を心配するソンさんと父さん
何がなんだって?
僕の知らない許婚がいて、しかも男!?
いや、男って!!
僕だって男なんだけど!!!!
「その……一度先方さんと会ってみてだな」
「んなっ!!と、父さんは知ってたの!?」
「いやまあ」
「いやまあじゃない!!父さんは僕が男と結婚しても平気なの!?」
「………近年は同性婚も認められているわけだし」
どうにか椅子に這い上がりじっとりと父さんを睨みつける
涼しい顔でお茶なんて飲んじゃってるし、ソンさんにお代わりまで頼んじゃってるし!!
「まあまあ、いいお話じゃないですか、お相手はこの辺りでも有名なチョン家のご子息ですよ」
「うむ、チャンミンの将来のためにもな」
そう言って二人で頷き合う父さんとソンさんに、本日2度目の脳震盪を起こした僕だったんだ
. あの夏を忘れない 34
~Cside~
あれから僕は逃げるようにユノ先輩の家から帰ってきた
酔いなんてとっくに醒めていたし、バクバクと音を立てる心臓の音だけがやけに煩くて
帰りのタクシーの中で頭を抱えて、運転手さんにまで心配されるほどだった
家に着くなり真っ先にシャワーを浴びて乾いた喉にミネラルウォーターを流し込む
真夜中過ぎの部屋はやけにシンとして………
『チャンミン好きだ、俺ともう一度付き合ってほしい』
そう言って僕を見つめる瞳に嘘なんて一つもなかった
………夢、だったのかな
まさか酔って都合のいい幻覚を見たとか、それとも僕がおかしな事を言ったとか
……いや、あれは現実だった
だって握られた手の温もりが残っているもの、長い指が僕の手を包んで、それから……///
あれが本当だとしたら、一体僕はどうすればいいんだろう
あの夏の日、別れを告げられてもずっとあなたの事が忘れられなかった
でも………また、フラれてしまったら?
そんな、悲しいことばかりを考えて、せっかくの先輩の気持ちを素直に受け止められない僕だったんだ
. 結婚なんかしたくない 5
~Yside~
「え?お会いになったんですか?」
「ええ、そうなの」
「………それで?」
「それがね、気に入ってしまったのよ」
「……え?」
「全く困ったものね、婚約の話、進めてくださって結構よ」
そう言い放つとお祖母様はヒラヒラと手を振ってリビングから出て行った
仕事から帰るなりすごい剣幕で詰め寄ってくるから一体何事かと思ったら………全くお祖母様ときたら
俺の名前はチョン・ユンホ
由緒あるチョン家の長男として生まれ、今は不動産関係の会社を営む父の元で働いている
母は早くに亡くなっていて、忙しい父に変わって祖父母の元で育てられたってわけ
そうか、会いに行ったんだ………
思わず緩んでしまう口元を片手で隠す、一体どうやって説得しようかと考えあぐねていたのに
「ふふ、まさかの展開、だな」
発端となったのは先日亡くなったお爺様の遺言だった
忘れられない人がいると教えられたのは、まだ随分小さな頃だったと思うが
『おばあさまがいるのにすきなひとがいるの?』
『遠い昔の話だ』
『むかし?』
『ああ、わしの初恋というやつだ』
『はつこい……』
『初恋はな、叶わないものなんだよ』
そう言って寂しそうに笑うお爺様の顔が忘れられない
普段は何も言わない人だったから、遺言と聞いて本当に驚いてしまったけど
さて、我が許婚殿はどう出るか……
突然の急展開に楽しくなりそうな予感が止まらなくて、やっぱり口元が緩んでしまう俺だったんだ
. あの夏を忘れない 33
~Yside~
『チャンミン好きだ、俺ともう一度付き合ってほしい』
やっと言えた………
ずっと胸の奥にしまってきた想いをやっと伝えることができた
我ながら勝手だとは思う、でも言わずにはいられなかった
俯いてしまった君は黙ったまま、でも、君の手を離してやることはできないよ
だってやっと掴まえたんだ……!!
「チャンミン?」
「……す、すごく勝手だ」
「うん」
「………あの時僕をふったくせに」
「うん、ごめん」
「い、今更……///」
俯いたままボソボソと話す君の声を逃すまいと、少しずつ距離を縮めていく
ああ、このまま抱き締めてしまいたいのに
「ダメ、かな?」
「………///」
「チャンミン」
「………少し、考えさせて、ください///」
そう言って見上げるバンビアイがあまりにも綺麗で、つい見惚れてしまう俺だったんだ
. 結婚なんかしたくない 4
~Cside~
「まあまあ二人とも落ち着いて、ほらお茶淹れますから」
ソンさんは呆れたように溜息をつくと、手際よくお茶を淹れてくれる
母さんが亡くなる前から通ってくれてるだけあって、僕にとっては親戚のおばちゃんのような人で
いつだって僕の味方をしてくれる人、なんだよね
「で、父さん、どういうことなんです?」
「チャンミン、落ち着いて聞いてほしいんだが………」
それから父さんが話したことは、僕の人生の中で全く聞いたことのない話だった
なんでも遥か昔に祖母が良家の男性と出逢い、叶わぬ恋に身を焦がしたとか
身分違いの恋に、いつかきっと両家の縁を結ぼうと誓い合い泣く泣く別れた二人
お互いに別々の人生を歩むことになった……
うちのお婆ちゃんは早くに亡くなったから、その約束もうやむやになっていたはずなのに
つい半年ほど前にその方が亡くなって、遺言にそう記されていたらしく……
「と、言うわけでお前には許嫁がいるわけなんだ」
「い、いいいい許嫁!?」
「そう、そして先方から正式な婚約の申し込みがあったと言うわけなんだ」
「そ、そんな!!全く会ったこともないのに婚約とか!!相手の方も彼氏とかいるかもしれないじゃないですか!!」
「いや、その心配はない」
「なんで!!」
「お前の相手は男性だからだ」
「は、はあああああああ!!!!///」
「まあ、坊ちゃん!!しっかり!!」
父さんの言葉に驚いて立ち上がった僕は、あまりのことに脳震盪を起こしてしまったんだ
. あの夏を忘れない 32
~Cside~
『ん、少し話しても?』
そう言って微笑むアーモンドの瞳が優しくて、思わず目を逸らした
だいぶん酔いは覚めてきたと、思う
いや、まだ酔ってるのは確かだけど、こんな状況じゃとても……
なんでユノ先輩の家にいるんだろう、とか
なんで今向かい合うようにして見つめあってるんだろう、とか
いつの間にか握られた手はあったかくて、心地よくてとても振りほどけそうにないし
僕は………///
「チャンミン聞いて」
「………///」
「あれからずっと後悔してた」
「………え?」
「なんで別れてしまったんだろうって」
「……そ、それは!!」
「自分の中でね、膨らみ過ぎた気持ちを整理できなかったんだ」
「……」
「でも、ずっと忘れられなかった」
…………今、なんて言ったの?思いもかけない言葉に思考が回らないよ
揶揄われてるの、かな?
それともこれは夢………なのかな?
「ユノせんぱ……」
「チャンミン好きだ、俺ともう一度付き合ってほしい」
僕を見つめる真っ直ぐな瞳に嘘なんて一つもなくて、僕はただ俯くことしかできなかったんだ
. 結婚なんかしたくない 3
~Cside~
「父さん、どうかしたの?」
「今更………というか、そんな約束があったこともすっかり忘れていたんだが……」
珍しく口ごもる父さんをマジマジと見つめる、割と頑固で物事はハッキリというタイプだから
こんな風にしてるのって本当に珍しいんだけど……
まさか経営難で会社を閉めるとか?
いやいや、この前社員の前で売り上げ10%アップを宣言してたばかりだし……
「何、ハッキリ言ってよ」
「ん、ああ、チャンミン」
「だから何!!」
「………黙って結婚してくれ」
…………今、なんて言った?……結婚とか聞こえたけど、結婚って………?
「はっ、はああああああ!!!!」
「すまん!!まさかこんな事になるとは!!」
「ととと父さん!!親子で結婚なんて出来ません!!///」
「バカ!!俺とじゃない!!」
「じ、じゃあ一体誰と!!」
「ぐっ……そ、それは」
「父さん!!!!」
「まあまあ朝からなんの騒ぎです?」
思わず立ち上がって父さんに詰め寄る僕に、割って入ってきたのは家政婦のソンさん
「何があったか知りませんけどね、喧嘩はダメです、喧嘩は!!」
「ソンさん、喧嘩じゃないよ」
「とにかく二人とも座って!!」
「「は、はい……」」
ソンさんのあまりの迫力に、渋々食卓につくしかない僕達だったんだ
. あの夏を忘れない 31
~Yside~
「さ、入って?」
「………で、でも///」
「いいから、少し休んでいけばいい」
「………///」
「チャンミン」
「じ、じゃあ少しだけ///」
フラフラになった君を攫うように連れて帰ってきてしまったが
怒らせてしまった………?
酔った姿があんまり可愛いくてこれ以上人に見せるのは耐えられなかった、とか
随分勝手な理由だとは思うけれど
「とりあえずソファに座って、ジャケットはそこにかけるといい」
「……ありがとうござい、ます///」
「ん、ほら水、気持ち悪くない?」
「………はい///」
差し出した水をコクリと飲み干す仕草にさえ、ドキドキと胸が高鳴るのに
無防備にシャツのボタンを外すとか、酔ったらいつもこんな風なんだろうか
「少し横になる?」
「いえ、大丈夫です///」
「ん、少し話しても?」
「………はい///」
ほんのり頬を染めて見上げるバンビアイがあまりにも綺麗で、思わず伸ばした手をぎゅっと握りしめる俺だったんだ
. 結婚なんかしたくない 2
~Cside~
『お婆ちゃまはね、とても好きな方がいらしたのよ』
『ふうん、それはおじいちゃまじゃないの?』
『初恋の人なんだって、初恋はね、結ばれないって言われてるの』
『そうなんだ、そんなの悲しいね』
………おじいちゃまには内緒だからね
そう言って僕の髪を撫でる母の手が心地よくて、思わず擦り寄ったところで目が覚めた
なんだ、夢だったんだ……
久しぶりに母の夢を見たのに、お婆ちゃんの事をひたすら話してる夢だなんて
こないだ知らないお婆さんと話したから、かな…
僕の名前はシム・チャンミン、近くの大学に通うごく普通の学生だ
父は小さな印刷会社を営んでいて、卒業後は僕もそこに勤める予定になっている
経営はいつも赤字だし、職人気質の父がいつまで続けられるかはわからないから、せめて父の定年まではと考えていて
自分の夢は、って聞かれると困るけど、男手一つで僕を育ててくれた父に恩返しがしたいと思うから
ちょっと寂しいと感じる時もあったけど、在宅でできるウェブデザインの仕事も勉強中だし
何かあっても一応暮らしてはいけるんじゃないかって思ってる
「チャンミン、ちょっと来なさい」
「あ、はい」
朝の食卓でぼんやりとそんな事を考えていると、いつになく神妙な顔をした父さんが部屋の入り口に立っていたんだ
. あの夏を忘れない 30
~Cside~
『ダメだよチャンミン』
そう言って困ったように僕を見つめるユノ先輩に昔の記憶が蘇る
初めて出会った時から憧れていて、本当に好きだったから
『付き合ってほしい』そう言われた時は夢なんじゃないかって思った
でも、そんな幸せな時は長くは続かなくて、すぐに別れを告げられてしまって……
悲しくて、辛くて
でも忘れることなんて出来なくて………
「チャンミン?」
「あ、あの………僕やっぱり一人で帰ります、から///」
「……立てないのに?」
「キ、キュヒョンに頼みます、ユノ先輩は戻って……」
「却下」
「………へ?」
「お持ち帰り決定だな」
「………え?あ、あの?///」
ユノ先輩は僕の腕をグイと引いて立たせると、腕の中にすっぽりと包み込んでしまう
スーツから香るユノ先輩の香りに胸が痛くなるのに、好きって気持ちが溢れてしまうのに
離してください、そう言えばいいのに……
あなたの腕の中があまりに心地よくて、とても逃げられそうもない僕だったんだ