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. あなたの匂いに包まれて ~恋人未満~ 9
~Yside~
慌てて家を飛び出したけど、タクシーの中で少し思い直してチャミにメッセージを送った
『事務所に行ってくる、帰ったら連絡して』
そっけないけど今はこれくらいしか思い浮かばない、まさか社長にカミングアウトしに行くなんて言ったら止められるに決まってるから
でも……やっぱり心配はかけたくない
いつだって俺のことを気にかけて、自分のことは後回しにして
そんなあなたがやっぱり好きだって今更ながらに実感してる/////
事務所の廊下を歩きながら、社長になんて言えばいいかをずっと考えていたけど、ここは正直に本当のことを伝えた方がいい気がするんだ
ノックを二回してドアを開けると、そこにはにっこりと笑うキム社長の顔があって、俺は一礼してから促されるままソファに座った
「ユノ久しぶりだな、どうした、何かあったのか?」
「……し、社長!!俺っ!!」
「好きな奴がいるんだって?」
「……はっ?/////」
「随分な美人らしいな、しかも男とか」
………ちょ、ちょっと待って!?//////
言おうと思っていたことを先に言われてパニック状態の俺!!
そんな俺を見て社長は呆れたように溜息をついてるし、いったいどうなってんだ?
「おいおい、そんなに驚かなくてもいいだろう」
「な、なんでっ!?/////」
「さっきね、パクが来たんだよ」
「……はっ……はっ!?/////」
思いもよらない人の名前が飛び出して、理解するのに暫く時間がかかってしまった俺なんだ
. 空色の調べにのせて ~リウの帰還~ 1
リウの番外編です♡
15years after•*¨*•.¸¸♬
~Rside~
『リウ、たまにはこっちに帰ってきたら?』
そんなチャンミンとの会話から決まった帰国の話、学校の休みと講義を調整してどうにか一週間ほど帰れることになった
その週は父さんの仕事も落ち着いてるみたいだし、久しぶりに家でゆっくり出来るかな
俺が韓国へ帰るとなって少し拗ねているのは我が恋人で(笑)
分かりやすい反応が可愛くて、つい、からかってしまうけど、しまいには涙をためて俯いてしまうから
「ミヌ、俺がいなくて寂しい?」
「……さ、寂しくなんて!!/////」
「嘘、顔に書いてある」
「…….っ!!何言って!!/////」
「あ、真っ赤になった(笑)」
「リ、リウのバカ!!/////」
遂には怒って自分の部屋へ逃げてしまったミヌ、ちょっとやり過ぎちゃったかな
……きっとまだチャンミンのこと気にしてる
口には出さないけど、家の話をする度に宝石みたいな瞳を曇らせるのを俺が見逃すはずが無い
いっそ連れて帰ってしまおうか……
ミヌの予定次第だけど、今の時期ならどうにかなりそうな気もする
俺は少し考えてからスマホをタップすると、チャンミンへと電話をかけたんだ
. あなたの匂いに包まれて ~恋人未満~ 8
~Cside~
寝ていると思っていたとはいえ、ユノの前であんなこと言っちゃって、僕を見つめる悲しそうなアーモンドアイが頭から離れない
『ダ、ダメだ!!』
まるで僕を逃さないようにぎゅうぎゅうに抱きしめて、目の端には涙まで溜めちゃって
ユノを好きでいるために辞めたいと思ったのに、これじゃあ逆効果じゃないか
………そんなに僕のことが好き…なのかな/////
そのまま眠ってしまったユノの横で、僕は結局一睡も出来ずに朝を迎えてしまって
気分転換にコンビニでも行こうと、寝ているユノには黙ってそっとマンションを抜け出した
最近は忙しくて、こういう静かな朝の雰囲気とかゆっくり過ごすことができなかったから
……なんだか気持ちいい
ユノも起こしてくればよかったかな、朝なら人通りもまばらだし、きっと誰にもバレないと思うのに
なんだかんだ言うくせに結局はユノのことばっかり考えていて、素直じゃない自分が嫌になってしまう
……真っ直ぐすぎる君が怖いのかもしれない
こんなにも短期間のうちに僕の心の中の殆どを占めるユノに、戸惑っているのかな……
「シムさん?」
コンビニの袋を下げて歩道を歩いていると、車の中から声をかけてきたのはマネージャーのパクさんだった
「こんな所でどうしました?ユノと喧嘩でもしましたか?」
「……そ、そういうわけじゃ/////」
「当たらずとも遠からず、ですか(笑)」
「……/////」
「少し話しませんか?ちょうどあそこにカフェもある」
パクさんはにっこりと笑って、少し先にあるカフェを指差したんだ
. 愛の詩をきかせて 34
~Yside~
あの日はとても離れがたくて引き止めてしまったけど、黙って俺の腕の中にいる君が愛おしくて
人の温もりがこんなにも温かく、こんなにも大切に思えたのは君が初めてかもしれない
今まで付き合ったことはあったけど、大体は向こうからの一方的なもので、特に社長に就任してからはそんな余裕すらなかったから
『……ユノさん/////』
そう呼ばれることが擽ったくて、でも嬉しくて、もっと君を抱き締めてしまうけど
大切にしたいと、守ってやりたいと心から思った
本当はね、俺にとって大切なものを持つのはとても怖いことだった
失ってしまった後の悲しみを知っているから……
「……結局僕の意見とか気持ちとか聞いてくれませんでしたね/////」
「ん、そうかな、だって嫌がってなかっただろ?」
「……やっぱ強引だ/////」
「君が嫌でも離さない」
「……ワンマン社長/////」
「ふふ、よく言われる」
「……/////」
俺と君の時間は始まったばかり、先のことはわからないけど、二度と離すつもりなんてないから覚悟しておけよ
俺の仔鹿君!!
. あなたの匂いに包まれて ~恋人未満~ 7
~Yside~
『いっそのことスタイリストを辞退した方がいいのかも……』
微睡みの中で聞いたチャミの言葉は、俺が一番聞きたくない言葉で
思わず飛び起きてチャミに縋ってしまったけど、俺ってホント余裕ない
そんなに年は変わらない筈なのに、チャミの方が大人びていて、俺はいつまでも追いつけない気がして
……焦ってるのかもしれない
自分に自信がないと芸能人なんてやってられないし、アメリカでそれなりに自信をつけて帰ってきた筈なのに、こんなんじゃチャミに愛想つかされても仕方ないのかも
せっかくの休みなのに、俺が寝ている間にチャミは出掛けてしまっていて、ベッドでゴロゴロとしていたけど
……いっそ社長に打ち明けてしまえばいい?
だって、チャミが俺と付き合ってくれないのは、やっぱり俺のことを考えての事だと思うし
俺のことを好きでいてくれるって信じてるから/////
こういうのは一度パクさんに相談した方がいいんだろうけど、生憎スケジュールが詰まりまくってるからなかなか事務所には行けないし
今日がチャンスな気がする……!!
そうと決まれば善は急げ、着替えながらスマホをタップすると社長が事務所にいるかを確かめる
『本日社長は終日事務所におられますよ』
電話の向こうのスタッフに社長への伝言を頼むと、取るものもとりあえずタクシーへと飛び乗った
こんな時でもサングラスと帽子は欠かせないのがちょっぴり辛いとこだけど
俺はタクシーの中で祈るように手を組むと、チャミとずっと一緒にいられますようにって神様にお祈りしたんだ
. 愛の詩をきかせて 33
~Cside~
社長さん……ユノさんの話は、僕が思っていたよりずっと悲しいものだった
こんな高級スーツを身につけて、こんな広いマンションに住んでいて、社長なんて凄い肩書きを持っているのに、どこか寂しそうで
……僕で本当にいいのかな?
腕の中にいるあなたはとても無防備で、いつもの強引さは身を潜めて、まるで子供のように甘えているみたい
「チャンミン……何を考えてる?」
僕の肩に顔を埋めたままぼそりと呟くから、吐息が首筋にかかってゾクゾクしちゃうよ/////
「……僕…僕は、正直分からないです」
「……うん?」
「お、男同士の恋愛とか……その、勿論経験ないし/////」
「うん」
「……で、でもっ、しゃ…ユノさんといると、ドキドキして……その、胸が熱くなるっていうか、そのっ/////」
「俺もだよ」
「……/////」
「俺もどうしていいか分からない、でも君といたい、それだけじゃダメか?」
「…ユノさん/////」
「ね、もう一回キスしていい?」
「……も、もう何回もしてるくせに/////」
「ふふ、そうだった、でもこれは恋人になってからの初めてのキスだよ」
……こ、恋人!?/////
「あ、あの……ユノさ……/////」
「好きだよチャンミン」
そう言ってゆっくりと体を離したユノさんは、僕の両頬を包んで優しいキスをくれたんだ
. あなたの匂いに包まれて ~恋人未満~ 6
~Cside~
いつの間にか眠ってしまったユノ、ぴったりと身を寄せて全く重たいったらない
いつもは大人びて見えるけどこんな所はまだ子供っぽい、前髪を撫でると擽ったそうにするから思わず笑ってしまうよ
『チャミ好き』
あんな風にストレートに言われてしまうと、拒むことなんて出来るわけもなくて
……だって本当は好きなんだから仕方ない/////
僕はそっと体を剥がすと、すやすやと眠るユノに毛布をかけてやった
ユノは猫のように丸くなって、気持ちよさそうに寝息を立てていた
……とんだ猫ちゃんに好かれたもんだ/////
ふとスマホに目をやると、マネージャーのパクさんからメッセージが届いていた
『お疲れ様です、ユノの様子はどうですか?あんまり冷たくしないでやってくださいね、シムさんとのこと、如実に仕事に現れますから(笑)』
なんて、ちょっと恥ずかしいメッセージが届いていて、普通マネージャーさんなら自分の担当するタレントの恋愛とか応援しない気がするのに
ユノって不思議と皆んな味方にしちゃうのかな…
芸能人と付き合うことになるなんて……スタイリストなら確かにあり得ることなのかもしれないけど
ユノのことを考えるならやっぱり……
「いっそのことスタイリストを辞退した方がいいのかも……」
「ダ、ダメだ!!」
ぼそりと呟いた瞬間、ぐっすり眠っていると思っていたユノは泣きそうな顔で僕を見つめていて
僕はやっぱりユノを抱き締めずにはいられなかったんだ
. 愛の詩をきかせて 32
~Yside~
ソファに並んで座ると、不安げな君の手を握りながら俺は自分のことを話始めた
そう、俺は15の時まで施設で育った、ここからはだいぶ遠く離れた静かな田舎町だった
「俺の母は学生の時に父と出会い、俺を身籠って身を隠した、家族にも反対されてたった1人で俺を産んだんだ」
「今は……?」
「俺が幼い頃に亡くなったよ、病気でね、それからは施設に引き取られてね」
「……」
「母は父の名前は明かさなかったらしい」
「そんな…」
悲しそうに瞳を揺らす君、そっと頬を撫でて俺は話を続けた
「施設ではね、慎ましい生活ではあったけど幸せだったよ、ただ経営があまり良くなかった、高校には行かずに働こうかと考えていた、そんな時にチョン家から迎えが来たんだ、今更ね」
「社長さん……」
「俺は断ったよ、母を見捨てた人の所へ何故行かなきゃいけないんだって、だが施設への援助を交換条件に俺はチョン家に戻ったんだ」
「……辛かった?」
「……義母はとてもいい人でね、可愛い妹もいて、とても申し訳ない気持ちでいっぱいだった」
「……」
「急に現れた自分の子でもない俺にとても良くしてくれた、なのに父は俺に会社の跡を継げと言ったんだ、勝手だろう?」
ふわりと甘い匂いがしたと思ったら、俺は君に抱き締めてられていて
「……僕でいいんですか?/////」
「君がいい」
「社長さん/////」
「ユノだ」
「……ユノさん/////」
俺は細い体を引き寄せると、温もりを確かめるようにずっと抱き締めていたんだ
. あなたの匂いに包まれて ~恋人未満~ 5
~Yside~
正直まともな恋愛なんてしたことなかった……
中学の頃から芸能界に憧れて、得意のダンスで今の事務所の練習生になり、ただがむしゃらに練習をしてきたんだ
彼女とかいたにはいたけど、相手から一方的だったし、自分から告白することなんてなかったのに
「僕は好きだよ、ユノの声」
そう言って俺の顔を覗き込むバンビアイ、ああ、なんて綺麗なんだろう
ぎゅっと抱き締めて腕の中に閉じ込めて、もう誰にも見せたくないなんて、チャミに言ったら怒られるだろうな
「……バカ、苦しいって/////」
「チャミ、俺のこと好き?」
「……ユノ?/////」
「俺…どうやったらチャミに振り向いて貰えるのかな」
好きだって伝えて、キスだって許してくれるのに、恋人にはなって貰えないなんて
こんな俺じゃ愛を語るバラードなんて歌えるわけない
「……ほんと困った子だね」
「…チャミ、嫌いにならないで」
「なるわけない、こんなに好きなのに/////」
「……チャミ、俺……ダンスも諦めたくないけど、チャミのことはもっと諦めたくない」
「バカ、諦めなくていいよ/////」
「チャミ好き」
「ん、知ってる/////」
チャミは俺の首に細い腕を絡ませて、おでこをコツンと合わせてから優しくキスをしたんだ
. 愛の詩をきかせて 31
~Cside~
………今なんて言ったの?
そう聞き返したいのに、僕の言葉はあなたの唇へと飲み込まれて、いつの間にか握られた手は長い指に優しく絡められていく
『好きだよチャンミン』
初めて名前で呼ばれた気がする、いつもからかうように『仔鹿君』なんて呼ぶくせに、今日はそんな目をしてそんなこと……/////
数えきれないキスの後、力なんて入らなくて暫くは呆然と抱きしめられていたけど、なんだかだんだん腹が立ってきちゃって
……だって僕の返事だって何も聞いてないのに!!/////
体を話して抗議をしようと睨みつけるけど、全く効力がないのは何故だろう
そんな優しい目で見ないでほしいのに……/////
「ふふ、そう睨むなよ」
「……だって、強引すぎだし/////」
「よく言われる」
「…そ、それにあなたの事何も知らないし/////」
「ん、これから話すよ、あまりいい話じゃないけどね」
「………/////」
「おいで、かけて話そう」
手を繋いだままソファへと座らされて、やっぱり伸びてきた腕に抱きしめられて
「……は、話すんじゃなかったんですか?/////」
「このまま聞いてほしい」
「……え?」
「俺はね、15の時まで施設で育ったんだ」
社長さんの思いもよらない言葉に、僕は思わず体を離して顔を見上げた
アーモンドの瞳は悲しく揺れていて、僕はそのまま動けなくなってしまったんだ