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. 結婚なんかしたくない 1
~Cside~
「んーいい天気」
一つ伸びをしながら川沿いの並木道を歩く僕、夏の日差しは眩しいけど心なしか風は爽やかで秋の気配が感じられる
今日はバイトも休みだし、のんびりと図書館でも行ってみようかと思っていたところだった
「すいません、道をお尋ねしたいのですが」
そう言って声をかけてきたのは上品そうなお婆さん、この辺りじゃ見かけない顔だし
見るからにいいところのご婦人のようだけど……
「はい、どちらまで行かれますか?」
「ええ、この辺りに図書館があったと思うんだけど、昔とは随分変わってしまって」
「ああ、移転したんですよ、この道の先にあります」
「まあ、そうなのね、まだ少し歩くかしら?」
「そうですね、僕もそこへ行くんでご一緒しましょうか?」
「ええ、宜しければお願いします」
ぺこりと頭を下げるそのご婦人に僕も慌てて頭を下げる
足が悪いのか綺麗な杖を持っていたから、途中の階段では腕を組んで支えてあげたりとか
あまり普段はしないような会話をして図書館へと連れて行ってあげたんだ
是非に御礼をさせてほしいと言われたけれど、一緒に歩いただけだし、図書館に来るのもついでだったから
そこは丁重にお断りして、そのご婦人とはその場で別れたんだ
まさか、その出来事が後に僕の運命を変えてしまうなんて
この時の僕は思いもしなかったんだ………
. あの夏を忘れない 29
~Yside~
「ほら大丈夫?」
「あ……はい///」
「バカ、飲みすぎなんだって」
「す、すいません///」
フラフラと立ち上がったチャンミンを連れて個室を後にする
本人は大丈夫だと言い張っていたが、誰が見ても一人で歩ける状態じゃないのに
必死に振り解こうとする腕を掴んで、半ば抱えるようにしてトイレへと連れて行った
個室から出てレストルームにある椅子に座ったチャンミンは、首筋までほんのり赤く染まって
そんな無防備な姿、誰にも見せたくないのに……
「気持ち悪い?」
「……あ、いえ、でも……」
「でも?」
「も、帰りたいれす///」
「ああ、送って行くよ」
「ええっ!?あの……タクシーで帰ります、から///」
「ダメだ」
「………え、わ///」
慌てて立ち上がる体を咄嗟に抱きとめる、ふわりと香る君の香りに目眩がしそうになるのに
君は無防備に俺に身を任せてきて……
「………ユノ先輩?///」
「ダメだよチャンミン」
「……ダメ、れすか?///」
「え………?」
「やっぱり僕じゃダメ、なんだ///」
「ちょ……おい!!」
そう言ってふにゃふにゃと座り込んだチャンミンは、俺の膝を抱えたまま眠ってしまったんだ
. やっぱり君が好き 42
~Yside~
「ユンホさん行ってきます///」
「ああ、行ってらっしゃい、あ、待って?」
「………へ?…あ…んっ///」
「ふふ、気をつけて」
「は、はい、ユンホさんも///」
「ああ」
玄関先でのキスでフラフラと出て行く君に手を振ってゆっくりと扉を閉じる
やっぱり送って行けば良かった、かな(笑)
アルバイトをしていた書店で社員として働き始めたチャンミン
こうしてうちから出勤することもしばしばで……
そのうちこっちに越してきてもいいんじゃないかって思っているところ、なんだ
焼肉を食べに行ったあの夜、俺達はやっと一つになることができた
到底ロマンチックとは言えない行為だったが、二人とも幸せで、満たされていて
体ごと人を愛するってことを改めて実感した
チャンミンにまだ止められてはいるものの、恋人がいることは近々発表しようと思っている
世間が受け入れるか否かはわからないけど、先々のことも考えて
これだけは譲れないって社長にも宣言しておいた
だってずっと一緒にいるって決めたから
君の事が大切だから
ずっと愛していきたいから
役者としても社会人としても、まだまだ未熟な俺達だけど
チャンミン、君がいれば大丈夫
ずっと俺の恋人でいて?
一生かけて愛していくから………
. あの夏を忘れない 28
~Cside~
突然のユノ先輩の登場に動揺しちゃって、目の前のビールを一気に流し込む僕
そっか、知り合いなんだから当然参加する、よね
でも、さっき会社で別れた時は何も言ってなかったのに……
いやいや、ユノ先輩のプライベートまで僕が知るはずもない、か
頭の中でぐるぐると考えてみるけど、目の前に座ったユノ先輩がかっこよすぎてとても正視できそうもない
隣のヒチョルさんがユノ先輩と話してるから、僕はチラチラと様子を伺うしかないけど
ほんの少し不機嫌そうに見えるのは気のせい?
「来週も飲み会あるんだろ?お前の歓迎会」
「ああ、らしいね」
「はいっ!!場所は僕が決めてきました!!」
「キュヒョン、お前は仕事が早いね~」
「ふふん、任せてくださいよ!!」
「なんだ、仕事もちゃんとやれよ~」
「あれ、チャンミンどこ行くんだ?」
わあわあと騒ぐキュヒョン達を見ているうちに、自分でも気付かず飲みすぎてしまったようで
トイレに行こうと席を立った時には足元がふらついていた
「なんだよチャンミン酔ったのか?珍しいな」
「……だ、大丈夫れす」
「誰か付いてってやれよ~」
「大丈夫れすって!!///」
「あ、じゃあ俺が」
そう言ってふらつく僕の腕を掴んだのは、少し困ったように微笑むユノ先輩だったんだ
. やっぱり君が好き 41
~Cside~
『俺のところに嫁に来ればいいさ』
そう言ってアーモンドの瞳を細めるユンホさん、深い意味はないのかもしれないけど
息が止まってしまうかと、思った……///
ここ何日かで色々なことがありすぎて、こんな風に落ち着いて話せたのは久しぶりだった気がする
あ、こないだの夜も少し話したっけ……
それから僕らは交代でシャワーを浴びて、髪も乾かないうちに手を繋いでベッドへと滑り込んだ
慣れない行為にどうしても逃げてしまう僕を、ユンホさんはゆっくりと丁寧に開いていった
二人で苦労してやっと繋がった頃には、僕もユンホさんも汗だくで息も上がっちゃって
思わず目を合わせて笑ってしまった
あなたのものになれたこと……
ただそれが嬉しくて幸せで
ずっと大切にしたいって
このまま一緒にいたいって
ユンホさんが僕の中に熱を放って、暫くは二人でおでこをくっつけ合って微笑み合って
やっと二人で眠りについたのは、もう空も白み始めた夜明け前のことだったんだ
. あの夏を忘れない 27
~Yside~
「おおユノ、よく来たな~」
「ああ久しぶり、チャンミンもお疲れ」
「お、お疲れ様です///」
本当に急な呼び出しだった、まさかこんなところでヒチョルと飲む羽目になるとは
以前海外研修で数ヶ月ほどアメリカにやってきた彼は、気さくでとてもいい奴だったから
仕事終わりにつるんで夜な夜な遊びに出かけたりしていたっけ……
呼ばれるがままに座ったのはちょうどヒチョルのの目の前で
チャンミンとその親友であるキュヒョンを両脇に侍らせて、随分ご満悦じゃないか
距離の近さが気になるがせっかくの雰囲気を台無しにはできない、な
「まさかこんなところで会うなんてな」
「ああ、元気そうでよかった、お前もこっちに戻ってくるのか?」
「社長の命令でね、あちこち行かされてる」
「なんせワンマンだからな」
「確かに」
「チャンミンは上手くやってるか?いいアシスタントになるだろ?」
「ああ、助かってるよ」
何気ない会話の端に見え隠れする俺の知らない時間がチクリと胸を刺す
そりゃそうか、チャンミンと再会したのは10年ぶりなんだから
ふう、と小さく溜息をつくと、チャンミンが気付いて声をかけてくれるけど
別の男にそんな風に微笑む君を見ているのは、正直居た堪れない、な
ほろ酔い気味にヒチョルにじゃれている君を見て、酷く憂鬱になってしまう俺だったんだ
. やっぱり君が好き 40
~Yside~
君からのキスだなんて………抑えが効かなくなってしまいそうなのに
ぴったりと寄り添った体をそっと離して、一つ息を吐いて見つめる眼差しは真剣そのもので
「……チャンミン?」
「ユンホさん、あの……///」
「うん?」
「僕とっても幸せで、あの……でも///」
「でも?」
「やっぱり公表は………その///」
「ん、君に無断でそんなことはしないよ」
「ユ、ユンホさんの気持ちは凄く嬉しくて!!///」
「ああ、わかってる」
「ぽ、僕も今のままじゃダメだって思ってて……もっとちゃんと生活しないとって」
そう言って視線を逸らしてしまう君、確かに今はアルバイトで生活しているから先々に不安もある、よな
「俺のところに嫁に来ればいいさ」
「なっ!!///ユンホさん」
「本気だよ?」
「う、嬉しいけど………この先ユンホさんの恋人として恥ずかしくないように、その……///」
「ありがとう」
……全く君って人は
そんな風に思ってくれたことが嬉しくて、腕の中の君を強く抱き締めたんだ
. あの夏を忘れない 26
~Cside~
「ごめん遅くなって!!」
「おお来たか!!こっち来いって!!」
「ヒチョルさんお久しぶりです///」
「チャンミン~相変わらず可愛いなぁ」
「すいませんビール追加で!!あと揚げ出し豆腐にチーズ春巻き!!」
僕を見て懐かしいと騒ぐヒチョルさんを押しのけて注文をするキュヒョン
ヒチョルさん主催の飲み会はいつも賑やかで、つい飲みすぎてしまうけど
楽しいからやめられないんだよね
キュヒョンの先輩であるヒチョルさんは、うちの会社では出世頭で
噂によると本社からもお呼びがかかっているらしい
「で、ゴマスリは上手くいってるか?チャンミン」
「……ヒチョルさんの差し金ですか?」
「まさか!!俺は課長に助言したまでだよ」
「本当に?」
「勿論、でもいい奴だったろ?ユノはさ」
「知り合い、だったんですか?」
「ああ、研修のときアメリカでね」
そう、だったんだ……
なんか意外な取り合わせな気もするけど、同じ系列の会社なんだから会う事もあるよね
「なんだよ物思いに耽っちゃって!!もうユノ係長にやられちゃってんの?」
「………はっ!?///」
「なんだよ気に入らないな~こんなんだったら呼ぶんじゃなかったな!!」
「………え?///」
カランと音を立てて店の扉が開くと、ひょっこりと顔を出したのはさっき会社で別れたユノ先輩その人だったんだ
. やっぱり君が好き 39
~Cside~
『恋人がいることをね、近々公表するつもりなんだ』
そう言ってニッコリと微笑むユンホさん、え………今、なんて?
動揺する僕を宥めるように、手を握ったままゆっくりと話してくれるけど、全く頭がついていかない
恋人を公表とかそれって僕のこと、だよね?
だってユンホさんは有名な俳優さんだし
僕は一般人だし、しかも男で………
とても信じられなくて暫くは呆然としてしまったけど、その間もユンホさんはずっと手を握っていてくれて
僕が落ち着くまで待っていてくれて……
そんなことしたらきっとユンホさんに迷惑がかかってしまうのに……
ああ、愛されてるんだって
大切にされてるんだって、実感してしまう
もしかしたらユジンさんのこともあってそんな事を言ってくれたのかもしれない
いつもぐるぐると考え込んで迷惑をかけてばかりの僕なのに
こんなにも僕を………
あなたの気持ちが嬉しくて幸せで、思わず抱き締めてその唇にキスをしたんだ
. あの夏を忘れない 25
~Yside~
「上手くいって良かったですね」
「ああ、思ったよりいい人だった」
「はい、電話やメールのやり取りじゃ伝わらないこと多いですもんね」
車の中でのほんの小さなやり取り、熱心に仕事の話をする君の横顔がほんのり上気して艶っぽいとか
全く、何考えてんだ俺は……
今日は二人で相手先に出向いてのプレゼン、ま、そこまで大袈裟なもんじゃなかったが、新しいプロジェクトに向けての下準備というか
この会社は外せないってとこだったから、上手く伝わって本当に良かった
「すっかり遅くなっちゃいましたね、あ……運転もすいません///」
「いや、俺が言い出したことだし」
「やっぱり違和感ありますか?」
「そうだな、しばらく慣れれるまでは俺が運転するよ」
「はい」
「チャンミンがさ、運転してるの見てすげー驚いたんだよな」
「………へっ?///」
「それにビールだってガッツリ飲んでるし(笑)」
俺の言葉にキョトンと目を丸くする君が可愛くて仕方ない
思わず伸ばした手で髪をぐしゃぐしゃと撫でてやると、擽ったそうに逃げるから胸が苦しくなる
「や、やめてください///」
「ああ、ごめん」
「……ほんと変わってない///」
「チャンミン俺………」
口から溢れそうになる言葉をグッと飲み込んで、曖昧に笑って誤魔化す俺だったんだ