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苺な彼とビールな僕

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. オオカミなんかじゃない 22















~Cside~












あれから僕は至って普通の生活を送っている









あの酷い雨の中出会った彼のことも夢だったのかとおもえるくらいに







首筋に残された赤い跡は、暫くして跡形もなく消えてしまったから余計に







結局マーキングってなんだったんだろう……







犬じゃあるまいし、人間にそんなことして匂いなんて残るものだろうか







いや、犬じゃなくて狼だったっけ(笑)







時々蘇ってくるのは僕を見つめる黒目がちな瞳、切れ長のくせにこっちが恥ずかしくなるくらい甘い視線だった








あんな目で見られたら誰だっておかしな気持ちになってしまう、よね








現に僕も………///








複雑な気持ちを抱えたまま会社を後にすると、暗くなった空からパラパラと冷たい滴が落ちてくる






なんだ、今日はついてないな








「今日は傘、持ってないんだよね」




「………ここにあるよ」




「へ?あ!!!!///」







顔を上げればそこにはにっこりと微笑むユノの姿!!








えっと、これはどういう状況?まさか夢、とかじゃない、よね?








ゴシゴシと目を擦るとグイと腕を掴まれた、そして目の前には優しくて甘いアーモンドの瞳!!








「ユノ!!///」




「良かった、まだ消えてない」




「えっ?///」





「もう俺のもんだ」





「ちょ、ちょ!!///」










ユノの手から離れた傘がスローモーションのように地面に落ちると、僕はユノの腕にしっかりと抱き締められていた







首筋に感じる吐息に体がジンと熱くなる



ああ、きっと離してもらえそうもない……








「チャンミン、会いたかった!!」





「バカ!!こんなとこで!!離せって!!///」





「やだ、離さない」






「ユ、ユノ///」










必死に逃れようとする僕をぎゅうぎゅうに抱き締めるユノに、不覚にも幸せを感じてしまう僕だったんだ




































. オオカミなんかじゃない 21















~Yside~










「だからさ!!次は絶対紹介するって!!」





「まあ、ユノったら、まだその人とお付き合いしてるわけじゃないんでしょう?」





「そうだぞユノ、母さんに変な事言うなって」





「変な事じゃない!!もうマーキングもしたんだ!!」





「はいはい、じゃあそのチャンミンさんの気持ちを確かめてから、ね?」










そう言ってベッドの上の母さんは優しく微笑んだ








あの後、チャンミンと別れた次の日、兄さんに連れられてやってきた母さんの療養先の病院







ずっと会えていなかったけど、やっと病状が落ち着いて面会の許可がおりたんだ







父さんと母さんは所謂別居中で、頑固な父さんは体調を崩した母さんになかなか会いに行こうとはしなかった







本当は会いたいって思ってるくせに、そういうとこ本当に素直じゃないんだ








家を飛び出した喧嘩の原因もことの発端は母さんのことだった








兄さんからは父さんが自分で動くのを待つように言われてだけど、そんなの待ってなんていられなかった







勢いで家を飛び出した俺に待っていたのはチャンミンとの出会い、そしてまさかの運命の番の予感!!








出会いはその、ちょっぴりかっこ悪かったけど、きっとチャンミンも同じ気持ちだって信じたい








あの首筋から香る甘い匂いが何よりの証拠!!









「ユノ、そろそろ帰るぞ、父さんにも連絡しといたから」





「うん」





「まったく、母さんを心配させるんじゃねえぞ?体に障るだろ!!」





「うん、ごめん」





「でもさ、あの人に感謝しないとだな、ほら、なんだっけ」





「チャンミン!!」





「ああ、そうだ、なかなかの美人だったなぁ~」





「ヒチョル兄さん!!」










顎に手を置いてニヤリと笑う兄さんに、慌てて首を横に振る俺だったんだ





































. オオカミなんかじゃない 20














~Cside~












「すいません、うちの弟が世話になりました!!」





「あ、いえ///」





「これ、つまらないものですが出張のお土産です」





「あ、そんな、お気を使っていただかなくても、その///」
 



「おっ、美味そうな菓子じゃん、チャンミンと一緒に食べる!!」





「このバカ、何言ってんだ!!お前もちゃんとお礼を言えっての!!」





「いてっ、蹴るなよ!!痛いって!!」










結局、あれからユノに無理やり抱き締められて、そのまま二人で眠ってしまった






勿論最初はその腕から逃れようと抵抗を試みたけど、僕よりガタイの良いユノに敵うわけもなく






しっかりと抱き竦められて、その……首筋のあたりに満遍なくキスされちゃって///







しまいには変な声とか出ちゃったし、ゾクゾクして体も熱くなってきちゃうしで大変だった







次の日早々にお兄さんから連絡があり、ユノは耳を引っぱられて帰ってしまった







ひたすらに頭を下げるお兄さんは、真面目そうな普通のサラリーマンだった








顔だけはやたらと綺麗で、キュッと上がった目がユノに似てる気もした、かな
 






それにしてもあれがマーキングってやつなんだろうか?







最初にお兄さんに会ったとき、少し怪訝な顔をしてユノの事を思い切り睨んでいたし






ユノは叱られたみたいにシュンとしていたし







二人の帰った後の部屋はやたらと静かで、さっきまでの出来事が夢のような気がしてならなかった
 






そう思うとちょっぴり寂しい気持ちになってしまうのは、僕もユノに惹かれていたから?








………もう、会えないのかな? 








首筋に残る赤い跡を指でなぞりながら、大きく溜息をつく僕だったんだ



























. オオカミなんかじゃない 19















~Yside~










「と、とりあえずは一旦離れて!!///」









そう言って俺の膝から降りてしまったチャンミンは、じゅうたんの上にヘナヘナと座り込んだ






大きな瞳で俺を睨み返すけど、顔は真っ赤だし、シャツもなんだかはだけてやけに色っぽい







そしてまた、甘い香りがする………







「チャンミン」




「な、なに言ってるかよくわかんない!!///」




「俺が嫌い?」




「き、嫌いとかじゃない、けど、でも!!///」




「でも?」




「わわ!!そばに来んなって!!///」









床にへたり込んだまま逃げようとする細い体を背中から抱きしめる






もしかして腰が抜けちゃってる?






この香りが何よりイエスのサインだってこと、わかってないんだ……








「チャンミン、好きだ」




「!!!!///」




「マーキングしていい?」




「なっ!!///僕は犬じゃない!!」




「ん、俺も犬じゃないよ」




「ちょ!!離せっ………んっ///」









バタバタと暴れる体を押さえ込んで強く抱きしめると、もう一度その首筋にチュッと口付けたんだ








































. オオカミなんかじゃない 18













~Yside~













「俺の番になってくれない?」




「は!?つ、つがい!?///」




「だってまた甘い匂いがしてる」





「へ?わわっ!!ユノ!!///」










やっぱり我慢できなかった……!!








隙をついて腕を掴むと、細い体を引き寄せて自分の膝の上に乗せた








意図的じゃなかった、とは言えない、かな









「ちょ!!離せって!!///」





「ねえ、チャンミン」





「つ、番ってなんだよ!!意味わかんな………あ///」








暴れる体を抱き寄せて力を込める、そしてその綺麗な首筋に唇を寄せた







俺を誘う甘い香りは、紛れもなく運命の香り







「ユ、ユノ!!///」





「俺のこと、嫌?」





「そ、そういう事じゃなくて!!///」





「俺は運命を感じる、チャンミンは?」





「う、運命?ちょ………んんっ!!///」









この体勢で我慢なんてできる筈がない








首筋にチュッと吸い付くと、ピクンと跳ねる体が堪んない







このまま強引に奪ってしまいたいけど、でも……









「チャンミン、好きだよ」




「えっ?///」




「好きになっちゃった」




「ええっ!?///」









パニックで大きな瞳をくるくるとさせるあなたが可愛くて、とても離してやれそうもない俺だったんだ

































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紫苑☆

Author:紫苑☆
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