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苺な彼とビールな僕

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. 君の瞳に恋してる 4










~Cside~









「チャンミン上がったよ、ほらハル、ママのところでしっかり拭いてもらえ」



「あ~い、ちゃ~マ~マ~」



「はいはいおいで、パパとお風呂気持ちよかったね」



「ね~」






バタバタと暴れるハルを拭きながらなんとかオムツを履かせてシャツを被せる




最近やたらとちょこまかと逃げるから着替えさせにくくって困るんだよね




やっとのことでパジャマを着せると、バスルームから出てきたユノが僕らを見てクスクスと笑っていた





「ったく、毎日が戦争だな(笑)」



「本当にね(笑)あ!!ごはんの用意できてるからちゃんと髪乾かして?」



「ん、でもアレ放っておいていいのか?」



「え?あ!!こらハル!!」



「ちゃ~!!マンマ~」





子供用の椅子によじ登りテーブルに並べたおかずに手を出すハル





どうにか間一髪で止めることができたけど、ほんと油断もすきもないったら!!





「こら!!」


「マンマ~う~」


「よしよし、パパが食べさせてやるよ」


「パパ!!あ~い!!」






そう言ってハルを抱えてテーブルに着いてくれるユノ、こういうのって本当に有難い……





「チャンミン、先食べろよ」


「………でも///」


「いいから俺に任せとけって、な?」


「………うん///」






そう言って黙々とハルにご飯を食べさせてくれるユノに、思わずジンときてしまう僕だったんだ























. 僕の彼氏はバンパイヤ 9









~Cside~








「は、離してください!!」



「いいじゃんちょっと付き合うくらいさ~」



「僕帰らなきゃいけないんで!!」



「またまた~可愛い顔して冷たいなぁ」







コンビニのバイトを終えての帰り道、いそいそと帰り道を急いでいたはずなのに、大きな男達に絡まれて身動きできない僕





この辺りじゃ見かけないから、きっと合宿とかで来てる体育大生なんだろう





近くに総合運動公園があったりするから、そういうの結構多いんだよね






店から出たところでバッタリと出くわして、腕を掴まれて離してもらえないとか!!





女の子でもないのにとんだ災難だよ(泣)





どうにか振り解こうとするのにガッシリと腕を掴まれて、全く何食ったらそんなにぶっとい腕になるんだってーの!!





「離せっ!!いやだ!!」


「強情なとこもいいじゃん、缶ビールなんてやめてそこの居酒屋で飲もうぜ」





ニヤニヤとしながら迫る男達!!汗臭くって吐き気がしそうだ!!







「あの、離していただけませんか?」



「はっ!?」



「俺の連れなんですよ、やあチャンミン、迎えに来たよ」



「………あ、チョン、さん?」



「なんだお前!!おわっ!?」






一体何が起こったのか、一瞬にして転がるデカイ男にその場にいた全員が目を丸くした





今のって……?触れたようにも見えなかったのに!!






「さあ帰りますよ」


「………へっ?///」







音もなく僕の目の前に移動したその人は、ニッコリと笑って手を差し出したんだ



































. 君の瞳に恋してる 3











~Yside~










「ユノ、遅くなってごめん!!」



「ちゃ~!!マ~マ!!うう~」



「ああ、ハルも遅くなってごめんね」







慌てた様子で俺の自室に入ってきたチャンミン、 そういや外は既にとっぷりと日が暮れている






額に汗なんて浮かべちゃって、そんな必死な顔もまたいいなんて






俺ってどこまでもこいつに惚れてんな(笑)







チャンミンの顔を見るなり持っていたおもちゃを放り投げて甘えるように飛びつくハル





ったく、さっきまで平気な顔で遊んでいたくせにゲンキンなやつだ(笑)






「チャンミンおつかれ」



「ユノ、遅くなっちゃって……」



「んなのいいんだよ、ハルだってご機嫌だったしな」



「パパ、むうっ」



「なんだ怒ってんのか、一丁前だなぁ」



「ふふ///」






俺とハルとの睨み合いに隣で微笑む奥さんとか!!なんだこれ、所謂幸せの縮図みたいじゃん






ハルを抱っこしてキスをしまくるチャンミンにしばし見惚れる





うん、今日も俺の奥さんは極上の美人だな!!










「今日も遅かったな、飯食って帰るか?」



「ううん、簡単なものだったら作れるし」



「無理すんなって、今から作るの大変だろ?」



「うん、でも明日は休みだし、お店からお惣菜分けてもらったし」



「そっか、じゃあ帰るか、なあハル!!」



「あ~い!!」









両手を上げて賛同するハルの笑顔に、仕事の疲れも吹っ飛んじまう俺達だったんだ








































. 僕の彼氏はバンパイヤ 8










~Yside~









隣に住んでいるから彼の大体の生活はわかる






朝何時頃に起きて、シャワーを浴びて朝御飯を食べて大学に行くとか






昼まで寝ているときは夕方バイトに行って夜遅くに帰ってくるとか







本当はね、俺達は他人の部屋に忍び込むことくらい容易いことなんだが







それをしないのは怖がらせないように、そっと近づいて振り向かせたいって思ってるから






思い通りに操るとかナンセンスだし、俺のスタンスには全く当てはまらない







でも、どうやらこの前の一件で警戒されてしまったらしく、大量のニンニクとか、十字架とか用意されていて思わず笑ってしまった







そんなの俺には効かないのに、可愛い抵抗をし始める君に益々夢中になってしまうよ







「ユノ、随分楽しそうだな」



「別に……」



「良い獲物でも見つけたのか?」



「いや」




「ふうん?秘密主義のお前のことだ、言うわけないか」




「ふふ」





何だかんだと探りを入れてくる仲間のシウォンを軽くあしらいながら、君のことばかりを考えてしまう僕だったんだ






















. 君の瞳に恋してる 2










~Cside~








「チャンミンここも頼むよ」



「はーい」



「チャンミンこっちも!!明日出すランチのデザートなんだけど……」




「はいはい」







僕が仕事に復帰してからもう一ヶ月、仕事と育児と家事に追われて毎日が怒涛のように過ぎていく





イェソンさんからのたっての願いでの復帰、でも、僕としても有り難かったのは正直なところで





ハルとずっと一緒に家にいるのもいいけど、やっぱりユノだけに頼りたくないっていうか





シェフとしての自分を忘れたくないっていうか






自分勝手だって思うけど、ユノは僕の意見を尊重してくれて






『働くのはいいけど無理すんな、お前だけの身体じゃないから』






とか言われちゃって、本当に僕には勿体無いほどの旦那様、なんだよね///






最初は保育園でグズっていたハルも、最近では園にすっかり慣れたようだし





お迎えに行った時に両手を上げて抱っこをせがむ我が子にジンときちゃって





つい涙ぐんでしまったり(笑)







イェソンさんが言うには僕が戻ってからランチの予約が凄くなって忙しくなったとか




だからお迎えが遅れたりすることも多くてユノには迷惑をかけちゃってる





現に今日も迎えに行って貰ったし







晩御飯はユノの好きなカルボナーラにして、帰りにハルの好きなお菓子も買ってあげよう






結局離れてても想うの大切な家族のことばかりで、ついニヤニヤしちゃっていつも冷やかされてしまう僕だったんだ



































. 僕の彼氏はバンパイヤ 7











~Cside~










『また飲ませてくださいね、では』








そう言って微笑む彼の笑顔にゾクリと全身が総毛立った






……何だったんだ、今のは






彼が出て行った後腰が抜けちゃって、暫くその場に座り込んでしまった






ほんと、まるで夢みたいな出来事だった






あんなに具合が悪そうだったのに、僕の血を舐めた途端に元気になってしまうとか






ま、まさか本当にバンパイヤとか……?






ぐるぐると考えながら彼の残したトマトジュースを手に取ると、見たこともないパッケージに見たこともない言語が書かれていた





なんだか匂いも独特だし、気持ち悪くなって直ぐに捨ててしまったけど






頭に残るのは苦しげな彼の横顔と、僕を見つめるアーモンドの瞳








………綺麗だった、よね///







超現実主義の僕にこんな事が起きるなんて……いやいや、まだバンパイヤとか決まった訳じゃなし!!






きっと変態なんだよ、うん!!







じ、十字架とか買ってこようかな


あとニンニクもぶら下げておこう








ああ神様、どうか僕をお守りください!!(泣)









なんだかどっと疲れてしまった僕は、その日ベッドに沈むようにして泥のように眠ってしまったんだ













































. 君の瞳に恋してる 1











~Yside~










「こらハル、それはダメだ!!」



「やあ~の!!」



「ほらチーフ!!そんなに怒らないでください、ハル君が怖がってますって」



「ったくテミン!!お前が甘やかすから!!」



「パパ、むうっ、てみ~」



「はいはい、怖かったね」







パタパタと覚束ない足取りでテミンの元へ走っていくハル





ったく、子供ってのは自分を甘やかしてくれる奴をよくわかってんだな(笑)









ハルが独り歩きを始めた頃、チャンミンは以前勤めていたレストランへと復帰した






復帰といってもパートって形で、時間はだいぶん短めにしてもらってるけど






やっぱり看板シェフが居ないのは売り上げに堪えるらしく、イェソンさんからのたっての願いで





『昼間だけでもなんとか』






なんて頭を下げられちゃって……





ま、そこまで言われたらやらないワケにはいかないよな






でだ!!





保育園に預けてはいるものの、何だかんだと遅くなっちまうチャンミンの代わりに、俺やテミンが迎えにいってるんだが





ま、当然会社に連れて来なきゃ行けなくなる訳で






キャーキャーと社内を走り回るハルに振り回されて、溜息しか出ない俺だったんだ





























. 僕の彼氏はバンパイヤ 6










~Yside~








………やはり思った通りだった







口の中に広がる甘い血の香りに、理性も何も吹っ飛んでしまうかと思った







そう、彼を初めて見たのは一ヶ月ほど前の夕方のことだった







すれ違い様に香る甘い匂いにふと振り向くと、そこには天使のように微笑む彼がいた






……美味そうだな






そう思ったのは彼の首筋があまりにも綺麗だったから






捕食というよりは焦がれていると言った方がいいのかもしれない







……要するに一目見て彼を気に入ってしまった









俺達の一族は昔よりはずっと減ってしまったが、皆それぞれに人間の世界にとけ込んで暮らしている





たまには突然人間を襲うような輩もいるが、そういうやつは一族を纏める機関の監視下に置かれることになる





ま、そんな奴はごく一部だが……






ほんの少し人間より寿命が長くて



ほんの少し人間の血が必要で






人工的に作られた血液のジュースを飲んで誤魔化す毎日だったのに、こんなにも欲しいと思える人に出会えるなんて……!!








さて、どうやって君を手に入れよう









そんな風に考えるだけでワクワクとしてしまう自分に、苦笑いしてしまう俺だったんだ








































. 溢れる想い 22











~Yside~








「おお、すげー気持ちいい」



「ほんとですね///」



「食い過ぎたからちょうどいいかな」



「ふふ、はい///」








今日は朝から海の近くまでドライブをして、ちょっとお洒落なカフェでランチをとった





美味しそうなメニューに色々頼みすぎてしまって、二人でフードバトルみたいに食べる羽目になっちまったけど






それはそれで楽しいからまあ、いいか(笑)





こうして二人で出かけるのって本当に初めてかもしれない






……君が家に居ることが当たり前になり過ぎて







それに……溢れる想いを抑えきれず無理に自分のものにしようとしてしまったり






こんなに恋愛が難しいものだったなんて






ましてや文章上ではあんなにも饒舌に愛を語っているのに







「……ユノ、さん?///」



「ん、何?」



「あの……どうかしましたか?」






ぼんやりと考え事をしていると、これでもかって程可愛い顔が首を傾げてくる





これで無意識なんだから周りは堪ったもんじゃないな





「どうもしないよ、ただ……」


「……ただ?」


「一緒にいて幸せだって思っただけ」


「!!……はい///」









繋いだ手から伝わる温もりがあったか過ぎて、2度と離さないようにぎゅっと強く握ったんだ
































. 僕の彼氏はバンパイヤ 5










~Cside~








ちゅう…………








あまりのことに何が起こったのか分からず呆然としてしまう





だって僕の指は目の前の人の口に見事に吸い込まれて、しかも音まで立てちゃって





なのに指先から伝わる感覚が体に広がって、なんだか体が熱くなってしまうよ!!






………これはやばい!!///







そう思った瞬間、掴まれていた慌てて腕を振りほどいた!!







「あ………」



「なっ、なななな何すんだっ!!!!///」



「………すいません、つい」



「つい、じゃねー!!!!///」



「あまりの甘い香りに自分を抑えきれなくて、傷は大丈夫ですか?」



「………へっ?あ……」







ハッとして自分の指を眺めてみる、でもそこにあった筈の傷は跡形もなく消えていて……





驚く僕を優しく見つめるイケメン、そういや僕は玄関に座り込んでるし、彼は僕を覗き込むように跪いてるし





なんだこの距離感!!!!///






「ありがとう、あまりに喉が乾いて死にそうだったんです」



「………へっ?///」



「また飲ませてくださいね、では」



「………はっ?///」








そう言ってニッコリと笑ったその人は、ふわりと立ち上がると音も立てずに部屋から出て行ったんだ
































. プロフィール

紫苑☆

Author:紫苑☆
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