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. 僕はバンビじゃない 13
~Yside~
「バンビ君今日の飯何?」
「あ、えっと今日はオムライスにしようかと」
「オムライスか、いいね」
「ふふ、サラダとスープも作っときますね///」
「ああ、サンキュー」
事務所から繋がる部屋へ顔を覗かせると、エプロンをつけていそいそと料理に励むバンビ君の姿
うん、こういうのっていいね
ネットでのやり取りが多くて殆ど外に出ない日もあるけど、人がいるだけでこんなにも癒されるのか
いや、人にもよる、かな(笑)
……バンビ君がここに住み始めて2週間が過ぎた
最初は怪しんでいたようだし、すぐに出て行くかと思ったが、どうやら慣れてくれたようで
目の保養兼、腹も満たしてくれるとか
あとは………
「あの、チョンさん」
「ん、何?」
「僕、明日から休みに入るんで何か他にお手伝いする事があれば、その///」
「ああ、そうなんだね、じゃあ頼もうかな」
「あ、えっと……僕に出来ることなら///」
「とっても簡単な事だよ」
「は、はい///」
キッチンカウンターに肘をついて見つめる先の大きな瞳が、ゆらゆらと揺れるのを満足げに眺める俺だったんだ
. 僕はバンビじゃない 12
~Cside~
「……それって大丈夫なの?」
「へっ?」
「なんか……やばそうな匂いがするんだけど」
「や、やばそう?」
大学の構内にあるカフェで親友のキュヒョンと待ち合わせて、引っ越したこと話したのはいいけど
随分と怪しまれて心配されてしまった……!!
チョンさんからは余計なことは話さないように言われているし、せっかく見つけた住むところを手放したくもないし
……あんまり詳しくは話せないんだよね
だって凄く居心地のいいところなんだ
住み込みっていうと店舗の二階の狭い部屋くらいしか思い浮かばないのに!!
あの広さにあの快適さ!!
食材も使い放題とか、食いしん坊の僕にはもってこいじゃないか!!
「大学の寮とかの方が良かったんじゃない?」
「あー、うん」
「そんな得体の知れない『何でも屋』だなんて、一体何をさせられるのかわかったもんじゃないよ?」
そう、チョンさんからは名刺を渡されたものの、人には『何でも屋』って言うように言われている
探偵事務所っていってもでっかい看板を掲げているわけじゃないし、相変わらず検索でもヒットしない
確かに怪しいっちゃ怪しい………よね
「この先の事ともあるんだからちゃんと聞いておいた方がいいよ!!」
「……あ、うん///」
真面目な顔してキュヒョンにそんな事を言われて、今更ながらに不安になってしまう僕だったんだ
. 僕はバンビじゃない 11
~Yside~
「だから、ユノってばなんで僕のこと雇ってくれなかったのさ!!」
「煩いよテミン、お前の料理は壊滅的だろ?」
「ええ~?イェソンさん掃除は得意だよ?ねえ、ユノ?」
「はは、貴重な情報屋を失うことになるからそれはできないな」
「ちぇっ、つまんない~」
そう言ってデスクに突っ伏して拗ねるテミンの頭をガシガシと撫でてやる
路頭に迷っていたところを助けてやった縁で知り合ったテミン
昔は生意気なだけなガキだったのに、今じゃいっぱしの情報屋になって
イェソンも俺も助けられてる、よな
「それにしても随分可愛い子を雇ったもんだな」
「ん?ああ」
「おお、随分な気に入りようだ、今度会わせてくれよ?」
「まあ、気が向いたらね」
「ええ~僕やだ、失恋じゃん」
「テミン、お前は黙っとけって」
ブツブツ言いながら俺にじゃれてくるテミンを見つめがら、バンビ君のことばかり考えてしまう俺だったんだ
. 僕はバンビじゃない 10
~Cside~
「ん、美味い!!」
「あ、良かったです///」
そう言って次々に料理を口に運ぶチョンさんの顔を見てホッと胸をなで下ろす
男の僕が作ったものなんて食べて貰えるのかとドキドキだったけど
………だ、大丈夫そう、かな?///
雇い主がご飯を食べてる時ってどうすればいいんだろう
家政婦とかならやっぱりキッチンにいるべきだろうか
所在無げにウロウロとしているとクスクスと笑う声が聞こえてふと振り返る
そこにはジャケットを脱いでシャツの腕をまくるイケメンの姿があって!!
「何やってんの?一緒に食わないのか?」
「へ?///」
「どっからどう見ても不審者だ、ほら、箸持ってきて、そこ座って」
「ああ、えっと///」
チョンさんに急かされて慌ててテーブルについたものの、なんだか落ち着かなくて箸を持ったままソワソワとしてしまう
探偵って本当だろうか………
怪しいって思うけど悪い人には見えないし
ち、超絶にイケメン、だし///
それにそんな風に見つめられたらドキドキしちゃって目も見れないじゃないか!!
「バンビ君」
「うわ、はいっ!!///」
「ほら、食べて?」
にっこりと笑うアーモンドの瞳に見惚れちゃって、ちっとも味がしなくなってしまった僕だったんだ
. 僕はバンビじゃない 9
~Yside~
『は?人を雇った?』
「ああ、雑用が片付かないからな」
『片付かないのはお前のせいじゃないのか、ったく、あんまり部外者入れんなよ』
「まあそう言うなよ、害のない学生だし」
電話の向こうで盛大に溜息をつくイェソンに苦笑いする
ま、あんまりこういう募集の仕方はしないのが通常だから仕方ない
ものは試しと求人を出してみたらこんないい子が来てくれるとか、こういうのを運命っていうのかもしれない、な
『それで、例の件はどうなってる?』
「ああ、それはそろそろカタがつきそうだ」
『ならいい、じゃあくれぐれも漏れないようにしてくれよ』
「わかってるって」
何度も念押しするイェソンとの通話を終えるとスマホをタップする
仕事仲間であり親友でもあるイェソンはこの辺りの情報屋の親玉のようなもので
かといってガラが悪いでもなく、ニコニコとして人当たりもいいから人望も厚い
だからこそチンピラみたいな奴らを纏められるのかもしれないな
俺はといえば表向きは探偵業、裏では……
「チョンさん、すいません///」
「ああ、何?」
「あの、一応一通り作ったので食べてみてくれませんか?気にいるかわかんないし、その///」
事務所と続きになってる俺の部屋からひょっこりと顔を出すバンビ君
用意しておいた水色のエプロンが堪んない
「………あの?///」
「ああ、すぐ行くよ」
俺はノートパソコンを静かに閉じると、緩む口元を隠しながら自分の部屋へと向かったんだ