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. 恋する君は花の香り 15
~Yside~
「さ、入って入って、うわ、汚ねえな、ちょっと待っててくれよ」
「ふふ、はい///」
あれから何度か会って、初めは緊張していたチャンミンの表情も柔らかくなって
気のせいかもしれないけどなんだか香りも甘くなったような……
で、今日は張り切って焼肉を奢る!!なんて言ってた割にはお目当ての店が臨時休業で
仕方なく別の店に変えようとしたら
『ユ、ユノの家に行ってみたい///』
なんて言われちまって、慌てて母さんに連絡して家に連れてきたってわけ
ま、当然のごとく俺の部屋はその、汚いままで
それでもチャンミンの希望なら、と部屋に案内をしたんだ
隣にあったチャンミンの祖父母の住んでいた洋館は取り壊されて今は別の家が建っていて
ちょっぴり寂しそうな君が気になったけど
『まあまあ、お隣に住んでたチャンミン君じゃないの!!あら、随分美人さんになって~』
なんて、チャンミンを見るなり大騒ぎの母さんにそれどころじゃ無くなったみたいだ(笑)
俺の家の庭をじっと見つめるチャンミンは、やはりあまり思い出せないみたいで
少しだけ落ち込んでいたけど
気を取り直して買ってきたチキンを2人で仲良く頬張ったんだ
. 恋する君は花の香り 14
~Cside~
『チャンミンの香りを確かめたくて』
別れ際に抱きしめられたと思ったら、極上の笑顔でそんなセリフ
何だろ、胸がキュッと苦しくなる
生まれついて持ったこの香りを確かめたいなんて、誰かに言われたことなかったから……
チョンさん……あ、ユノって呼べって言われたけど、昔のことをよく覚えていない僕にとっては初対面にも近い人なのに
『ユノって呼ばないと返事しないよ?』
なんて悪戯っぽく言われたりして、なんだ、意外と子供っぽいんだって
あれから毎日連絡はくるし、電話だってしょっちゅうかかってきてびっくりしちゃうけど
なんだろ、ワクワクするっていうかドキドキするっていうか
でも……僕を見つめる熱っぽい視線は、ただの幼馴染を見るものとは違う気がする
まさか、ね………
「で、あれからどうした?」
「……え?///」
「なんだ、いい顔してんじゃないか」
「………///」
「お前にもいい想い出だってあるんだよ、な!!」
そう言って僕の肩をポンポンと叩く店長の言葉に、ジンと胸が熱くなる僕だったんだ
. 恋する君は花の香り 13
~Yside~
「で?上手く話せたのか?」
「ああ、そうだな」
「なんだそのにやけた面は~全く、感謝しろよ?」
そう言って俺の背中をバシバシと叩くドンへ、そう、俺はとうとうチャンミンに会うことが出来た
俺にしては珍しく行動に移せなかったっていうか、その……色々と怖い部分もあって
もしかして人違いだったら、とか
もしかして避けられてるんじゃないか、とか
想い出の中で一番大切にしていたことだったから……
まだまだ知らないことは多いけど、再会したからには力になってやりたい
そして叶うことなら俺の気持ちを伝えたい、なんて……
「それにしてもさ、お前がストーカーと間違われるなんてな」
「まったくだ」
「てことは以前そういう事があったって事、だよな?」
「………え?」
「でなきゃあんな風に言われねーだろ?」
言われてみればそうかもしれない
確かにコンビニでバイトしている割にはレジのあたりでは見かけなかったし、どちらかといえば裏方に回っていたのかも
やはり、何か……
「ま、ここで悩んでても仕方ないからさ、力になってやれよ、な!!」
「……ああ」
その後はドンへの言葉が頭の中から消えなくて、まったく仕事が手につかなくなってしまった俺だったんだ
. 恋する君は花の香り 12
~Cside~
「えっと、じゃあここで」
「へえ、こんな近くに住んでたんだ」
「はい、学校が近いんですよ、だからアパートも借りやすくて、それに支援もあるし」
「そっか、一人暮らししてんだな」
「……はい」
バイト終わりにカフェで話をして、途中で僕のお腹が鳴ってしまったからラーメンまでご馳走してくれて
ハッキリとは覚えていないのに懐かしい笑顔に癒されたっていうか
きっと、良い人なんだろうって……
帰りは心配だから家まで送る、なんて女の子みたいに扱われて
『だってストーカーとかいるかもしれないだろ?』
とか言われちゃって、思わず2人で顔を見合わせて吹き出してしまった
そういや店長も心配してたっけ
「それにしてもストーカーはないよな」
「随分イケメンのストーカーですね///」
「言うねぇ、何も出ないぞ」
「ふふ///」
「でもストーカーと変わんないかも」
「……えっ?わ///」
不意に腕が伸びてきたと思ったら僕は抱き締められていて
一度ギュッと力を込めてからそっと体を離された
「ごめん、我慢できなかった」
「……い、いえ///」
「チャンミンの香りを確かめたくて」
「……///」
「また連絡する、おやすみ」
そう言ってふわりと笑うアーモンドの瞳が優しくて、何も言えなくなってしまう僕だったんだ
. 恋する君は花の香り 11
~Yside~
「やあ、お疲れ様!!」
「すいません、お待たせしちゃって」
そう言って息を切らせながら店に入ってきた細過ぎるシルエット
綺麗な顔に長過ぎる手足はまるでモデルのよう
でも、宝石みたいな大きな瞳と艶々のホッペは昔のまんまだ
それにしても大きくなった、なんて変に感心してしまうけど
あれから10年以上が過ぎてるんだから当たり前、だよな
「ほんと久しぶり」
「……あの///」
「やっぱり思い出せない?」
「………ご、ごめんなさい」
「そっか」
「……あの、もしかして僕のおじいちゃんちで遊んだ、とか?」
「そう!!二人でよく遊んだよ!!」
「………そう、なんだ///」
俺の言葉にホッとしたように微笑む君が可愛くて、ああ、本当に出会うことができたんだって
その後はポツリポツリと自分のことを話してくれて、もちろん病気のことも
最初はストーカーかと思って遠ざけられていたことも知って焦ったけど
そんな病気のことがあればナーバスになる筈だよな
「あの店長さんは母の知り合いで、とても良くしてくれるんです」
「そっか」
「あの……また、会ってくれますか?」
「勿論!!俺からも誘おうと思ってた!!」
「ふふ///」
チャンミンの言葉に思わず立ち上がってしまった俺に、可笑しそうに片目を細める君が眩しくて
いつまでも見つめていたくなる俺だったんだ