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. 家政婦さんは恋人 21
~Cside~
「俺が夢中なのはチャンミンだけだから」
「で、でも///」
「反論は無し、さ、帰ろ?」
そう言って僕の手を握る優しいアーモンドの瞳
軽く触れた唇がジンと熱くてまた泣きそうになってしまうよ
だってまさかユノさんが来てくれるなんて思わなかった
サイン会は終わったの?とか
どうして僕の居場所がわかったんだろう、とか
色んな事が聞きたいのに、胸の奥に言葉が詰まってまったく出てきてくれない
タクシーの中でも握った手は離して貰えずに、僕はただ俯くことしかできなくて
そんな僕にユノさんは何を聞くでもなく優しく包み込んでくれる
不器用な僕のすべてをわかってくれてる?
ああ、想いが溢れて止まらないよ
「チャンミン着いたよ」
「あ……///」
「飯は何でもいいか、デリバリーでもする?」
「あ、えっと、下準備」
「そっか、じゃあチャンミンの作った飯、食べよう」
「………はい///」
エレベーターの中で僕の顔を覗き込むあなたが優しくて、思わず泣きそうになる僕だったんだ
. 僕のお尻が狙われてます 11
~Yside~
「やあ、いらっしゃっい」
「こ、こんにちは///」
「連絡来ないから心配してたんだよ、駅まで迎えに行ったのに」
「あ、えっと、なんだか申し訳なくて、その///」
「まあいい、さ、入って?」
「あ、はい、すいません、お邪魔します///」
そう言って申し訳なさそうに眉を下げるバンビアイに思わず口元が緩む
どうやら気を使ってここまで歩いてきたようだが、かなり息が上がっている様子
アトリエまでは結構な坂になっているから、まあ、仕方ない
それにしても必死に汗を拭く様子に思わず構いたくなってしまう、そして汗で額に張り付いた髪が気になって仕方ない
「ふふ、そんなに暑いの?」
「あ、いえ、歩いてきたから///」
「そう、上着を脱いで楽にするといい、それともシャワーでも浴びる?」
「えっ!?///」
ソファにリュックを置きながらギョッとして振り返る君が可笑しくてつい吹き出してしまう
ま、半分くらいは本気だけど……
いや、でもあまり最初から怯えさせるのは良くない、よな(笑)
「あーはーはーは!!冗談だよ」
「あ///」
「お茶でも出すよ、座ってて?」
「は、はい///」
見るからにホッとしてソファに座り込む小鹿ちゃんに、緩む口元が抑えきれない俺だったんだ
. 家政婦さんは恋人 20
~Yside~
「………ユノさん」
「呼んだ?」
「えっ!?///」
しょんぼりと前のめりにかがみ込むシルエット、なんだよ、せっかくのスタイルの良さが台無しじゃないか
生え際から覗くくるんとした髪、遠くからでも見て取れる落ち込みように胸がキュッと苦しくなる
なんだ、まだこんなに近くにいたんだ………
俺の声に驚いて振り返る君にそっとそっと近づいた
だってね、ここで逃げられたら元も子もない、いや、例え逃げられたって地の果てまで追いかけるから
「ユ、ユノさん、どうして………」
「それはこっちのセリフ、メッセージ送ったのに」
「あ………///」
「電話もしたよ?」
「ご、ごめんなさい///」
しゅんとして俯く前髪が風にふわりと揺れる
堪らず抱き寄せると身を硬くするから、逃げられないようにもっと強く抱きしめた
「ユ、ユノさ……」
「心配なんてすること何もない」
「………え?///」
「俺が夢中なのはチャンミンだけだから」
「で、でも///」
「反論は無し、さ、帰ろ?」
硬く結ばれた唇に触れるだけのキスをして、もう一度腕の中に閉じ込めたんだ
. 僕のお尻が狙われてます 10
~Cside~
『帰ったら絶対連絡しろよな!!あ、あとお尻は気をつけた方がいいぞ』
そんなキュヒョンからのメッセージを見て苦笑いする僕
まったく、心配してるんだか面白がっているんだか(笑)
あの後数回のやりとりがあって、見学がてらアトリエに行くことになった
まだモデルの件は正式に受けたわけじゃない、でも興味はあるし、ま、連絡もしちゃってるし
強引そうに見えたのに意外にこちらの事も考えてくれているようで
『モデルなんて初めてだろうから見に来るといい』
なんて、そんな風に言われたら………
こ、声も低くて優しいんだよね、チョンさんって///
服は何でもいいって言われたけど、一応新しめのシャツを選んでジャケットも羽織ってみた
鏡に写る自分は相変わらずイケてないのに、こんな僕がモデルだなんて
もしかして抽象画、とかなのかもしれない、画家だなんて計り知れないから
ぐるぐると考え方ながら地下鉄を乗り継いで1時間ほどかけて郊外までやってきた
山手にある閑静な住宅が立ち並ぶ駅は、まるで別の国に来たかのように静かだった
『駅まで迎えに行くよ、着いたら連絡して』
そんなメッセージも貰っていたけど、探検がてら歩いて行きたい気もする
地図で確認すると然程遠くはないような、とりあえず連絡だけはしておこう
『今最寄駅に到着しました、このままそちらに向かいます』
緊張でドキドキとする胸を抑えながら、アトリエを目指して歩き出す僕だったんだ
. 家政婦さんは恋人 19
~Cside~
「はあ、なに、やってんだろ………」
テミン君とハグをするユノさんを見て咄嗟に会場を飛び出したものの、勿論行くあてなんてある筈もない
時刻はすっかり夕暮れ時で、道行く人たちも足早に帰っていく
肌寒さを感じて思わず自分の肩を抱きしめる、ああ、やっぱり見に来なきゃ良かったのに
これからどうしよう……
このままユノさんのマンションに戻れないし、かといって自分の家に帰るのも………
トボトボと歩いているとポケットの中でスマホがぶるりと震えた
取り出して画面を見てみると、表示されるのはユノさんからのメッセージ
『チャンミンどこ?近くにいるの?』
『電話に出ないけど何かあった?』
『サイン会終わったよ』
そんな沢山のメッセージを見ていると、ユノさんの顔が浮かんで胸がギュッと苦しくなる
好きってこういう気持ち、なのかな?
こんなにも切なくて苦しくて
でも、こんなにも会いたくて、きっと忘れる事なんてできないよ……
じわりと滲む視界、ああ、なんだ、僕ってば泣いちゃってるじゃん
女の子じゃあるまいし、こんな事で
こんな…………
「………ユノさん」
「呼んだ?」
「えっ!?///」
不意に聞こえた声にハッとして振り返ると、そこには肩で息をする汗だくのユノさんの姿があったんだ