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. やっぱり君が好き 38
~Yside~
『少し話を聞いてくれる?』
君を攫うようにして家に連れて帰ったものの、何から話していいかわかなくて、ただ君を抱きしめていたけど
腕の中で見上げるバンビアイは不安げに揺れていて……
向かい合わせにソファに座り手は握りしめたまま、俺は一つ息を吐いてずっと思っていたことを口にした
「チャンミンよく聞いて、まだ直ぐにではないんだけど」
「……は、はい」
「恋人がいることをね、近々公表するつもりなんだ」
「……え?ユ、ユンホさん!!///」
「俺はこの先ずっと君といたいと思ってる、ずっと隠し通すことはできないだろう?」
「で、でも!!」
「もちろん事務所には事前に話してある、時期を見てってことだったけど、少し早めてもいいんじゃないかって思ってね」
「……ユンホさん///」
「もちろん君の了承を得てから、ね?」
俺の言葉に俯いてしまった君は、キュッと下唇を噛んで考え込んでしまう
話が急すぎたのだろうか………
ずっと一緒にいたいという想いは同じだと思っていたけど
……もしかして俺の独りよがりだった?
じっと君の答えを待っていると、不意に甘い香りに包まれる
君に抱きしめられたのだとわかったのは唇が触れた後で
見つめるバンビアイから目を離すことが出来なくて、もう一度自分から唇を重ねたんだ
. あの夏を忘れない 24
~Cside~
『ふふ、10年分取り戻そうと思って』
そう言って瞳を細めるあなたに胸が苦しくなる……
何でそんなこと言うんだろう、せっかく普通に話せるようになってきたのに
あんな風に見つめられたら、とうの昔に心の奥にしまった想いが溢れ出してしまう
何だろ、先輩って容赦ないんだよね
本人は至って無自覚なのに、周りをどんどん振り回してくる
僕ってどれだけ先輩のことが好きなんだろう
好き、とか………
思わず首をブンブンと横に振る、ほんと何考えてんだよ!!明日は急遽二人で相手先に出向く事になったっていうのに
「はあ……」
「チャンミンチャンミン!!」
「なんだキュヒョンか」
「なんだじゃないよ!!ヒチョルさんが長期出張から帰ってくるらしいんだ」
「へえ」
ヒチョルさんはキュヒョンの先輩でよく飲みにも連れて行ってくれるいい人だけど、ちょっと調子が良過ぎるのがたまにキズ、かな(笑)
「何だよノリ悪過ぎだろ!!てことで急遽飲み会だから!!」
「………はっ!?」
「あ、強制参加な!!」
「はああ!?」
そう言って僕の背中をバシバシ叩いたキュヒョンは、浮かれ気味に休憩室を出て行ったんだ
. やっぱり君が好き 37
~Cside~
「よし!!帰ろう!!」
「ユ、ユンホさん?///」
「いいから急いで」
「えっ?わわ、待って下さい///」
個室に戻ってきたユンホさんはおしぼりを握りしめていた僕の手を取ってニッコリと笑った
あれから落ち着かなくて、水を飲んだり部屋をウロウロしたりしていたから
あまりの急展開に頭がついていかないのに
何が何だかわからないまま腕を引かれてタクシーに乗りこむと、あっという間にユンホさんのマンションへとついてしまった
ユジンさんはどうしたのか、とか
お金とか払ったっけ、とか
聞きたいことが色々あったのに、隣にいるユンホんは黙ったままだし
本当にいったいどうしちゃったんだろう………
どうしていいかわからず呆然とする僕をユンホさんは優しくソファへと座らせてくれたけど
僕の肩に顎を乗っけたまま動かなくなってしまって……
「………ユンホ、さん?」
「チャンミン」
「は、はい///」
「好きだよ」
「!!!!ぼ、僕もです///」
「少し話を聞いてくれる?」
「………は、はい」
そっと体を離したユンホさんの顔があまりにも真剣で、ちょっぴり不安になってしまう僕だったんだ
. あの夏を忘れない 23
~Yside~
「で、こっちの案件なんですけど」
「うん」
「お客さんの要望がタイト過ぎて、営業とも話してたんですが……」
「一度出向いてみようか?」
「……ですね、それがいいと思います、担当が変わって向こうも様子を見てると思いますし」
書類を眺めながら唇に指を当てて、ああ、その癖変わってないんだ、なんて
打ち合わせ中にこんな事考えるなんて結構ギリギリな気もするけど
側にいれば見つめたくなるのも当然な話で……
「……か、係長」
「ん?」
「今日も見過ぎです///」
「ん、ごめん、つい、ね」
「そんなに僕の顔珍しいですか?///」
「ふふ、10年分取り戻そうと思って」
「………自分からふったくせに」
………え?今、なんて?
君の口からポロリと洩れた言葉にハッとする
そのまま口を噤んでしまった君は視線を逸らしてしまったが
拗ねたように見えるのは俺の思い違いじゃない気がする
「チャンミン」
「な、何でもないです!!///」
そう言って席を立った君の耳が赤く染まっていて、溢れ出す想いを抑えきれない俺だったんだ
. やっぱり君が好き 36
~Yside~
「あの………チョンさん?」
「ユジン、なんでこんなところに」
「うふふ、偶然ですね」
そう言って悪戯っぽく笑うユジンに思わず溜息をつく
全くこんな時に迷惑な話だ……
「さっきね、可愛いお連れさんとお会いしたんですよ」
「ああ」
「メモを渡して欲しいとお願いしたら真っ赤になって行ってしまって、親戚の方ですか?」
「そんなところかな」
「随分冷たいんですね、撮影の時は優しかったのに」
パチパチと上目遣いで見つめるユジン、こういうのを計算してるっていうんだろうな
……確かに一般的に見て美人には違いない
ま、我が恋人君には全く敵わないが(笑)
思わずクスリと笑った俺を怪訝そうに見つめる彼女、まさか男と比べられてるなんて思いもしない、よな
「何がおかしいんです?」
「あ、いや、ユジン、悪いけどこのメモは返しておくよ」
「……え?」
「あまり不用意なことはしない方がいい、この世界で生きていくにはね」
「チョンさんあの!!」
何か言おうとするユジンを置いてその場を立ち去る、後ろにはマネージャーらしき人が様子を伺っていたから恐らく大丈夫だろう
新人女優の我儘に付き合わされて気の毒な話だ
俺は店主への挨拶を軽く済ませると、チャンミンの待つ個室へと急いで向かったんだ
. あの夏を忘れない 22
~Cside~
我ながら上手くやれてると思う………
あの夜から結構打ち解けたっていうか、少しはマシに話せるようになったっていうか
ちょっとユノ先輩の視線が優しすぎるのが困るけど………///
だいぶん慣れてきた気がするんだよね、うん///
あと一緒に働いてて思ったのは、仕事に対しての姿勢がとても誠実なこと
うちの甘々な重役達も黙らせてしまうほど厳しくてストイックで
こないだの会議なんてヒートアップしちゃって廊下まで声が聞こえていたし
こういうとこ昔から変わんないな、なんて
「チャンミンこの資料なんだけど」
「あ、はい、用意してます、こっちのフォルダに」
「ん、どれ?」
「あ、えっとここです」
僕のパソコンを覗き込むユノ先輩の横顔、近すぎる気もするけど、この人って基本こんな感じ、なんだよね
わ………でも、ドキドキする///
「チャンミン」
「あ、はいっ!!///」
「耳赤いって(笑)」
「………へっ?///」
僕の肩越しにクスクスと笑うあなたの笑顔が眩しくて、俯くことしか出来ない僕だったんだ
. やっぱり君が好き 35
~Cside~
『心配しなくていい、少し待ってて?』
そう言ってユンホさんは僕を残して部屋を出て行ってしまった
後から店の人が飲み物を持ってきて、泣きそうな顔を隠すのに必死だったけど
冷たいおしぼりを貰ったから、慌ててゴシゴシと顔を拭いて誤魔化した
ユジンさんってもしかしてユンホさんに気があるのかな……
連絡先を渡してくるとか……きっとそういうことだよね
あんなに綺麗な女優さんとか僕なんか絶対に敵わないのに
やっぱり振られてしまうのかな………
そう考えたら涙が溢れそうになっちゃって、僕はがっくりと肩を落とした
でも、とりあえずは待ってろって言われたし、いつも考えなし逃げ出してしまうから
ユンホさんに心配かけちゃいけない、よね
落ち着いて考えてみたら僕らはデート中だったわけだし、これからユンホさんの家にお泊まりするわけだし
うん、大丈夫、きっとユンホさんは戻ってくる
そう自分に言い聞かせて、どうにか気持ちを落ち着かせる僕だったんだ
. あの夏を忘れない 21
~Yside~
「おはようチャンミン」
「お、おはようございます、あの…///」
「ん?」
「昨日はご馳走様でした」
「いや、こちらこそありがとう、とても楽しかった、また近々誘ってもいい?」
「!!も、もちろんです///」
そう言ってぺこりと頭を下げると、そそくさと逃げてしまう君
後ろからぴょこんと飛び出た耳が真っ赤に染まって、あれでも隠してるつもりなのか……
反応は悪くない、と思う
我ながら自分勝手だとは思うがどうやって切り出そうかそればかりを考えてしまう
俺達もう一度付き合わないか?
君と話すたび口から出そうになる言葉、グッと飲み込んで胸の奥にしまうけど
想いが今にも溢れてしまいそうで……!!
「チョン係長?どうかしましたか?」
「あ、いや」
「来週末なんですがね、あなたの歓迎会をしようと思って」
「歓迎会、ですか?」
「ええ、うちの部署だけのこじんまりしたものですが、どうでしょう?」
「もちろん喜んで参加させていただきますよ」
「いやあ良かった!!店はいつも使ってるとこなんですがね、割といい料理を出すんですよ」
ニコニコと笑顔で店の画像を見せるパク課長、根っからのお人好しって感じだな
歓迎会なんてこそばゆいが、有り難く受けておくとしようか
それにまた君に近づけるかもしれないし
こうして君のことばかりを考えて、パク課長の言葉なんて全く耳に入らない俺だったんだ
. やっぱり君が好き 34
~Yside~
『ぼ、僕邪魔なら帰ります、から』
そう言って出て行こうとする君の腕を掴んで抱き寄せる
…………一体何があった?
腕の中の君は黙ったままだし、下唇を噛んで瞳にはいっぱいに涙をためて
「チャンミン、ちゃんと説明して?」
「………あの、ユ、ユジンさんって人が」
「は?ユジン?」
「………ユンホさんにって、あのコレ」
震える手で手渡されたのは小さなメモ、中には電話番号が書いてあるようだが
まさかここにユジンが来ている?
「チャンミン、ユジンにここで会ったの?」
「……はい、だから僕……あの///」
「俺は誰とここに来たんだっけ?」
「………え?あの、ユンホ、さんです///」
「じゃあ君が帰る必要なんてどこにもない」
「………でも///」
「心配しなくていい、少し待ってて?」
「………は、はい///」
もっと俯いてしまった君に触れるだけのキスをすると、彼を残して部屋を出る
全く、どういうつもりなんだ……
先に会計は済ませておいたから、すぐにでも店を出たいくらいだが
店主に声はかけておかないと
「あの………チョンさん?」
急ぎ足で店の廊下を歩く俺の前に現れたのは、さっき話していたユジンその人だったんだ
. あの夏を忘れない 20
~Cside~
『本当に綺麗になった』
そう言って微笑むユノ先輩は、やっぱり震えるほどにカッコよかった
面と向かってあんなこと言われたら、男の僕だって照れてしまうのに
しかもかなりの真顔で……
もしかして酔ってるのかって思ったけど、そんな風でもなさそうだし、帰りだって普通に地下鉄の駅で別れたけど
先輩の後ろ姿が見えなくなった途端、僕は駅のベンチに座り込んでしまった
ガクンと項垂れる僕に、心配した駅員さんが寄ってくるほどで
『なんでもないんです』なんて慌てて電車に乗る羽目になってしまった
家に帰ってすぐにシャワーを浴びると、鏡に映る自分をじっと見つめてみる
僕、ちゃんと話せてた、かな///
昔別れた恋人と再会して飲みにいくとか、僕の中じゃ有り得ないこと
上司なんだから断れるわけはない、そんなの言い訳に過ぎない気がして
結局は誘われて浮かれてたとか……
「何やってんだ僕」
ユノ先輩は仕事上の付き合いとして僕を誘ってくれただけのこと
勘違いしちゃダメだ
そう自分に言い聞かせて、濡れた髪もそのままに首を横に振る僕だったんだ