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苺な彼とビールな僕

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. あなたがいれば 8








~Yside~







……こんなに毎日が楽しくなるなんて思いもしなかった




くるくると変わる表情や、少々大げさな身振り手振りで、毎日あったことを話してくれる君が可愛くて




両親を一度に亡くしてしまったなんて思いもよらず、俺の言葉に涙を浮かべて俯いてしまった君




俺よりずっと年下な筈なのに、そんな痛みに一人で耐えていたなんて




出来ることはなんでもしてやりたい……





「チョンさん、お帰りなさい!!」



「こら、チョンさんじゃなくてユノ、だろ?」


「あ……!!/////ごめんなさい、ユノ、さん/////」



「ん、ただいまチャンミン」



「………/////」




じっと見つめるとすぐに逸らしてしまう視線を、どうやって繋ぎ止めたらいいんだろう




こんな感情は初めてで、自分でもどうしていいかわからない




まだ、会ったばかりなのに、頭の中は君でいっぱいなんだ





手を伸ばせば届く距離なのに、触れられないもどかしさに胸が痛くなる





俺を見つめる瞳に揺れる光は何?





君も同じように運命を感じていると思うのは、俺の思い過ごしじゃないと思うんだ

























. あなたがいれば 7








~Cside~






『からかってなんてないよ、バンビ君』





そう言ってふわりと笑ったあの人のアーモンドの瞳が忘れられない




バンビ君だなんて、子供じゃあるまいし/////




……でも、あの人がこれから同じ家の中にいるんだ




食事が済んでからも暫く二人でリビングで過ごして、色々と話してから部屋に戻ったけど




ドキドキし過ぎちゃって////




話したっていうか……チョンさんの質問に僕がずっと応えてただけなんだけど




たわいもないこと……


通ってる大学のこととか、友達のこととか


あとは趣味のこととか?




僕の両親のことは知らなかったみたいで、話した時とても驚いてたけど




もう平気ですって言った僕に、困ったように笑って髪をくしゃりと撫でられて




『平気なわけないだろう、無理はしなくていい』




そんなことを言われてしまって………




あの日からあまりにも慌ただしく時が過ぎていって、悲しむ暇なんてなかったから



改めてそんなことを言われると、自然と涙が溢れてきて




俯いてしまった僕を静かに見守って、そっと背中を撫でてくれたチョンさんの優しさに胸が熱くなる





初対面で泣いてしまうなんて、もう恥ずかし過ぎて顔も上げられないのに





『君と話せてよかった、また話を聞かせて?』





そんな風にあなたに見つめられて断れる人なんて、この世に誰一人としていないって思う僕だったんだ


































. あなたがいれば 6







~Yside~





寝ているときは天使のようだったのに、起きているときは大きな瞳をくるくるとさせて、これじゃあまるでバンビ、だな(笑)



二人で食べる初めての食事に最初は落ち着かなかった風だったのに、目の前に並べられた料理にキラキラと瞳を輝かせて




「さあ召し上がれ、お腹すいてるだろう?」


「は、はいっ!!////」



今にも立ち上がりそうな勢いで返事をくれるから、思わず笑ってしまったけど



それは見事な食べっぷりで(笑)



次から次へと吸い込まれて行く食べ物に、そんな細い体の一体どこへ入るんだとマジマジと眺めていたら




「………ご、ごめんなさい」


「遠慮しなくていい、沢山食べなさい」


「……はい////」




そんな元気な彼の様子に、イトゥクも口元を押さえて笑っていて



……本当に、こんな楽しい食卓は久しぶりだった



食事の後にリビングで寛いで、何を話すわけでもないのにとても安心できて



つい見つめてしまうのは、見ていてとても楽しいからで




「……チョンさんはどうしてそんなに僕をみるんです?////」


「なんだろう……可愛いから、かな」


「!!!!////」


「……ぷっ(笑)」


「か、からかって……!!////」


「からかってなんてないよ、バンビ君」


「バ、バンビ君?////」


「ああ、そっくりだ(笑)」




俺の言葉にきょとんとする君が可愛くて、やっぱり笑ってしまう俺だったんだ





























. あなたがいれば 5








~Cside~






ソファでついウトウトと眠ってしまって、目を覚ましたのはもう夕闇が夜へと変わる頃だった




………あれ?ブランケットなんてかけてたっけ?




僕の体をすっぽりと覆うようにかけられたブランケット、開いていた窓も閉められていて、部屋の隅のルームランプがぼんやりと灯りをともしていた



……イトゥクさん?




そう言えば夢の中で髪を撫でられたような、小さい頃母さんにして貰ったみたいに優しく




……お、起きなきゃ////




少ない荷物をクローゼットや引き出しへとしまい、そろそろと部屋を出て一階にあるリビングへと降りて言った




「やあ、起きたのか?」


「………へっ?////」




不意にかけられた声にフリーズしてしまう僕、だってイトゥクさんとは違う声だったし





スラリとしたモデルのようなスタイル

がっしりとした体に不似合いなほど小顔で

すっと通った鼻筋がきれいで


でも、なにより印象的なのは黒目がちなアーモンドの瞳……////








「ようこそ我が家へ、初めましてシム・チャンミン君」





恭しく手に胸を当てて一礼するその人は、この家の主人であるチョン・ユンホさんその人だったんだ
















. あなたがいれば 4









~Yside~







『遠縁の子を預かることになった、詳しくはイトゥクに伝えてある、面倒を見てやってくれ』





そういえば父にそんなことを言われた気がする……





食事の前に挨拶をとキツく言われて、着替えを済ませると仕方なく二階の角部屋へと向かった




………大学一年生、か




どんな事情かは知らないが、ここで暮らすからには顔ぐらいは見ておかないといけない、よな





気乗りはしないが一つため息をついてドアノブに手をかける



ああ、ノックぐらいすればよかったと思ったのはすでにドアを開けてしまった後で




そろりと中を覗き込めば部屋の中は静まり返っていて、夕闇に包まれようとする空が大きな窓に映りこんでいた





………いない?





ソファで丸くなる塊がもそりと動く、なんだ、そんなところで眠ってしまったのか




来て早々に昼寝とは、かなりの度胸の持ち主かもしれないな(笑)




……どれ、寝顔でも見てやるか




図々しくもすうすうと寝息を立てる彼に近づいて、そっと顔を覗き込んでみる





……その瞬間息が止まるかと思った





ふわふわの前髪


閉じた瞼を覆う長い睫毛


艶やかな肌はまるで陶器のようで





その瞬間に恋に堕ちていたことを、その時の俺は気付きもしなかったんだ













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紫苑☆

Author:紫苑☆
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