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苺な彼とビールな僕

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. 僕はバンビじゃない 4













~Cside~










「あ……れ?」








ビルのエントランスをくぐると意外にも明るい配色の内装に戸惑ってしまう








しかも見かけと違って新しく見えるし、中はリノベーション済みってことなのか









二階だから階段を使おうと思うのに見当たらなくて、僕は仕方なくエレベーターのボタンを押した










見たところ一階には部屋は無いように思える、一体どういう造りなんだろう………










二階に降り立つと幾つか部屋があってちょっと安心する、人がいないせいかやたらと無機質に見えてまるで異空間にいるみたいだ









『206』と表札のかかった扉を見つけると、深呼吸をしてからインターホンを押した








「開いてるよ、どうぞ」




「えっ?あ!!し、失礼します///」








重い扉を開けて中に入ると、室内は一面本で覆われてまるで書斎のようだ







声の主は奥に見える大きなデスクに座っているようだった






あれ……意外と若そう?しかも室内なのにサングラスとか!!








「は、初めまして、あの……」





「シム・チャンミン、秘密は守れるか?」





「……へっ?///」





「ふふ、これが一番重要事項だ、どう?」





「あ!!だ、大丈夫、です///」





「よし、じゃあ決まりだな」








奥のデスクに座ったままサングラスを取ったその人は、アーモンドの瞳を細めてにっこりと笑ったんだ






















. 最上級のチャラい奴 10














~Yside~











これは非常にまずい事になった………いや、ある程度は予想通りと言うべきか








うちの両親に挟まれて頬を染めるチャンドラ、可愛いには違いないがこれは………








「チャンミンさんよく食べるわね、見てて気持ちいいわぁ~」





「あ、はい///」





「チャンミン君はイケる口だね、さあ、次のワインを開けようか」





「あ、えっと///」








左右から迫るうちの両親に困惑しつつもどうにかうまく切り抜けようと頑張るその姿








それもこれも俺のためと思えば微笑ましい光景、だよな(笑)






うちの親がこんな風なのは昔から変わんない







早くに家を出た俺なんかはわりと客観的に見れてる方だと思うが、ま、妹のジヘなんかはうんざりした顔でその様子を眺めている







そう、うちの親はとてつもなくフレンドリーなんだ







さっきからチャンドラに目配せされてる気もするが、ま、もう少し………











「ねえ、ほっといていいの?」





「ん?」





「チャンミンさん困ってるわよ」





「ああ、そうだな(笑)」





「やだ、その緩んだ顔どうにかした方がいいわよ、言っとくけど私には母さん達は止められないから!!」










そう言って呆れたように両手を広げるジヘに頷いて、静かに助けを求めるチャンドラの元へと席を立ったんだ
































. 僕はバンビじゃない 3














~Cside~











「………ここ、だよね?」









書類に書いてある住所と地図を照らし合わせてみる、うん、確かにここであってる筈






思ったよりも古いビルじゃないか、この上が住居になってるってことだろうか







テナントが入ってるようにも見えないし、一体どういう建物なんだろう







そろそろと近寄ってみるとエントランスの手間にあるのはインターホン?いや……まさかのオートロック!?







申し訳ないけどオートロックのついてるようなビルには全く見えなかった







やっぱり秘密厳守って言ってたし、セキュリティはしっかりしてるってこと?






た、確か206号だったよね、僕は恐る恐る部屋の番号と呼び出しボタンを押してみる!!








『はい?』








暫くしてインターホンに出たのは不機嫌そうな男の声、僕はゴクンと唾を飲み込んだ








「あ、あの……僕、住み込みでバイトの予定の……」





『ああ、どうぞ、入って』





「はっ?///」








あまりにもすんなりと自動ドアの扉が開いて、少々面食らってしまった僕だったんだ











































. 最上級のチャラい奴 9















~Cside~












「初めまして、ユンホの父です」





「あ、初めましてあの……///」





「お父さん、こちらがチャンミンさん、聞いてた通りの美人さんよね~さあさあ、もう直ぐチキンも焼きあがるし待ってらしてね!!」





「あ、はい///」









ユノのお父さんが帰ってきて部屋に入ってきた瞬間フリーズしてしまった






だって、とっても似てるんだもの///







きっとユノが歳をとったらこんな風になるのかって思えるほど







よく見れば少し違う気もするけど、アーモンドの瞳は一緒だし、背だってスラリとして高いし///








「父さんこっちの荷物は?」




「ああ、奥に運んで置いてくれ」




「了解」







ひょっこりとリビングの扉から顔をのぞかせたユノは、なんだか大荷物を抱えて奥の方に行ってしまった!!







妹のジヘさんもキッチンに行ってしまったし、残された僕とユノのお父さんは………







「チャンミン君、いつもユノが世話になってるね」




「あ、いえ///」





「あいつは奔放な奴だから苦労も多いだろう」






「ふふ、大丈夫です」








にっこりと笑うお父さんはとっても優しそうに見えてちょっぴり安心した







僕の様子をじっと見つめるお父さんは不意に距離を詰めてくる







………えっと、なんだか近いんですけど?///








「いやぁ、美人だ、とても気に入った」




「はっ?////」








そう言ってにっこりと笑ったユノのお父さんは、僕の手をとってぎゅっと握りしめたんだ




























. 僕はバンビじゃない 2














~Cside~










バイトの紹介をしてくれた斡旋事務所を出て目的地に向かうと、今更ながらじわじわと不安が込み上げてきた







いくら秘密厳守って言っても面接くらいあっても良かったんじゃないのか







あまりの条件の良さについ契約書にサインしちゃったけど








相手はどんな人かもわかんないのに……







いや、一応一通りは聞いたんだ









なんでも一人で小さな会社を経営していて、時々助手が必要になるんだとか







しかも時間が不規則だからそれに合わせることが最低条件






でも、家賃と光熱費がタダになるのは魅力的すぎる!!






様子を見てバイトの掛け持ちができそうならお願いしてもいいし、うん、きっと大丈夫な筈!!







『チャンミンは可愛いんだから気をつけた方がいい!!』







親友のキュヒョンはあんなこと言ってたけど、それはきっと考えすぎ







だってこんなデカイ男とか、誰が……








「えっと、ここ……かな?」









こうして地図を頼りにやってきた先にあったのは、ビジネス街の一角にある古びたビルだったんだ























































. 最上級のチャラい奴 8















~Yside~
















「チャンドラ大丈夫か?」




「あ、うん///」




「ああ見えて悪気はねぇんだ、ちょっと我慢してやってくれよな?」




「ふふ、はい///」








そう言ってチャンドラはにっこりと笑った








………かなり、無理してるな









母さんにグイグイと距離を詰められて、困ってるチャンドラも可愛くていいけど








あんなに手を握られて、いくら母さんでも触りすぎじゃないのか








チャンドラに触っていいのは俺だけなのに、例え母さんといえど……







「あ、ユンホさん、お父さん帰ってらしたみたい、車の音が」




「へ?ああ」





「色々頼んでるから荷物運んであげてくれない?」




「了解」




「ユ、ユノ!!///」




「ん、ちゃんと紹介するから」




「………僕、また緊張してきちゃって」




「バカ、俺がついてんだろ?」




「ユノ///」






服の裾をキュッと摘んで不安げに見上げるバンビアイ、ドキドキと胸は高鳴って………






ああ、そんな顔されちまうと






「ユンホさん!!」




「ったく、わかったよ!!」









母さんに急かされて仕方なく立ち上がった俺は、チャンドラの頬にキスをして玄関へと向かったんだ

































































. 僕はバンビじゃない 1














~Cside~











「ああ、君がシム君だね、話は聞いてるよ」





「あ、はい」





「住み込みのバイトって事でいいんだね、条件の確認は大丈夫?」






「だ、大丈夫、です」









そして僕は言われるままに契約書にサインをした









まるで自分の運命を変えるスイッチを入れるかのように………









僕の名前はシム・チャンミン







ごくごく普通の大学生で将来はIT系企業に勤めたいと考えている






特技といえば昔から両親が習わせてくれた英語と料理ぐらい






共働きの両親の代わりに妹2人の面倒を見てきたから、料理は仕方なく覚えたって感じ、かな







そんな僕は今人生で一番の危機に面している







と、言うのも両親からの仕送りがストップしてしまったからなんだ








原因は父さんの病気が発覚して入院してしまったため








奇跡的に命を落とすことは免れたものの、治療に莫大な費用がかかるわけで……







学費は奨学金で賄えるけど毎月の家賃と生活費は風前の灯となった







で!!







心配する母さん達を安心させるため、新たに下宿先を探していたわけだけど






やたらといい条件が揃ってるところが見つかって、考えに考えた末今日その契約を済ませてきた







………が、どうにも胡散臭い気がしてならない









*家事一般が出来ること

*英語が出来ること

*秘密は絶対に守れること







自分でも口は堅い方だと思うし、条件的にはクリアしているから大丈夫







でも、秘密ってなんだろう








何かやばいことじゃないだろう、だって大学生可って書いてあったし







と、とりあえず今日は挨拶だけを済ませて……








緊張した面持ちで指定の場所にやってきた僕は、ゴクリと唾を飲んでインターホンを鳴らしたんだ
































. 最上級のチャラい奴 7













~Cside~












「それでユンホさんとはいつからお付き合いしてるのかしら?最近一緒に住み始めたのよね、ユンホさんたら全然顔見せてくれないから気になって仕方がなかったのよ~」





「は、はあ///」








一気に捲し立てられてろくに返事も出来ず、ただ頷くだけの僕








なんていうか予想外に積極的なお母さんだった……!!






最初に会った妹のジヘさんはユノに似てとても綺麗な人で、緊張しながらも普通に挨拶できたけど






このお母さんはそうそう一筋縄では………






「母さん離れて、チャンドラが怖がってる」




「あら、怖くなんてないわよね?」




「だ、大丈夫です///」




「ほら見てごらんなさい、まあ、本当に可愛らしいお顔だこと、お料理もなさるって聞いたけど綺麗な手をしてるわね~」







ニコニコとしながら隣に座ったお母さんは、にぎにぎと僕の手を握りしめる








「あ、あの……?///」




「んふ、お肌もすべすべだわ~」




「母さん!!」







なんだろう、この言い方とかフレーズってやっぱりユノに似てる気がする!!






ああ、初対面なのにこんなに距離を詰められて身動きが取れないとか






さすがのユノも強く言えないのかオロオロとこちらを眺めているだけだし!!







「あら、そろそろお父さんが帰ってらっしゃるわ、用意しておかなきゃね、チャンミンさん寛いでらしてね~」





「あ、ありがとうございます///」







パタパタとキッチンへ駆けていくお母さんを見つめながらホッと息を吐く






……こ、こんな調子で大丈夫だろうか






しかもここって結構な豪邸じゃないか


ユノって実はお金持ちだったんだ……







「チャンドラ大丈夫か?」




「あ、うん///」




「ああ見えて悪気はねぇんだ、ちょっと我慢してやってくれよな?」




「ふふ、はい///」









そう言って申し訳なさそうに見つめるユノが可愛くて、そっと髪を撫でてあげる僕だったんだ





























. そんなデカイの入るわけない!! ~チャンミンの憂鬱~ 21












~Yside~












「早く一つになりたいのに……」




「ん、慌てなくても僕はユノのものだから///」




「……すげー殺し文句///」










結局、あの日俺達は最後までは出来なかった……







でも、お互いに触れ合って熱を放ちあって






なんだろう、2人で高め合う事で一体感を得られたような気がした







うまく言えないけど、最初からうまく行くわけないし、俺達はまだ始まったばかりなわけだし







何もかもが手探りで、お互いがお互いをリードしていけばいいって納得できたんだ







とはいえ他のやつの前で可愛く酔っ払うのは勘弁して欲しい







それは次の日にキュヒョンさんにもキツく釘を刺しておいた







あんなに無自覚に可愛いのに酔っ払うと更にパワーアップするんだから溜まったもんじゃない







この先の苦労が目に浮かぶよう








ま、それはお互いに気をつけなきゃって思ってるとこ







なんせ俺のおかげかコンビニは大繁盛しちまってるから(笑)







『ユノもちゃんと気をつけて!!』







なんて膨れっ面で注意されて、思わず笑っちまったけど








この先もずっと一緒生きていくから………









いつかきっと、俺の隣でブーケを抱える貴方を見るために









頑張んなきゃ、ね









木枯らしが吹く冬の空に未来の俺達を思い浮かべて、心がジワリとあったかくなる俺だったんだ



































. 最上級のチャラい奴 6














~Yside~












「兄さんお帰りなさい!!」





「おう、ジヘか、久しぶりだな」





「ほんと何年振りかって感じ、あ、そちらがチャンミンさんね?」





「は、初めまして、本日はお招き頂いて、その///」






「ふふ、妹のジヘです、母さんがお待ちかねよ」





「さ、チャンドラ、入って?」





「お、お邪魔します///」







ガチガチに緊張したチャンドラを抱えるようにしてリビングへと向かった






なんだか手と足が同時に出ちゃってるし、おかしな歩き方になってるし(笑)






ま、それだけ真剣に考えてくれてるんだろう、真面目なチャンドラの事だから







「どうぞ、こちらです」




「んまーー!!!!いらっしゃい!!」




「えっ?あ、あの……初めまして僕……」




「聞いてるわよ聞いてるわよチャンミンさんでしょう?うちのユノがお世話になりっぱなしで!!ごめんなさいね出迎えもせずに~」







ペラペラと捲し立てる母さんに呆然とするチャンドラ






そうなんだよ、うちの母さんって………







ほんの少しフレンドリーが過ぎるっていうか、テンション高めっていうか








「とりあえず入って!!あ、座って!!お酒もイケる口なんでしょ?今夜はパーティよ~」




「パ、パーティ?///」




「んふふ、チャンミンさんって本当に美人さんねぇ、ほらユンホさん、突っ立ってないで手伝って」




「お、おう、チャンドラ、こっち」




「う、うん///」




「うふふ、今日はご馳走よ~お父さんももうすぐ帰ってくるから待っててね!!」










そう言ってチャンドラにパチンとウインクする母さんに、悪い予感しかしない俺だったんだ







































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紫苑☆

Author:紫苑☆
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