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. あなたの胸で眠りたい 10
~Yside~
『まあユノ、遅かったわね』
そう言ってグラスを傾けながらニッコリと微笑むリナ、全く何があったのかと思ったら
………女王さまのお出ましか
昔つるんでいた仲間の一人、恋人だった時もあったかもしれない
それを忘れるほどの前の話だが………
カウンターの中のテミンはホッとしたような顔でグラスを拭き始める
まあ、確かにこれはピンチ、かな(笑)
「何笑ってるの?」
「いや……」
「久しぶりに私に会えて嬉しい?」
「別に」
「相変わらず釣れないのね、今日はお付き合いしてくれるの?」
「カウンター越しならね、ちょっと失礼、テミン」
「はいはい、奥に」
「ちょ!!ユノ!!」
少々お怒り気味な客を笑顔でスルーすると、店の奥へと早足で向かう
さっきからチラチラと感じる視線の主はきっとまた一人で考え込んでいるのだろう
ほら、厨房の隅で小さくなる可愛い俺の恋人
「チャンミンただいま」
「……お、おかえりなさい」
「何を拗ねてる?」
「!!す、拗ねてなんか………んっ///」
抗議の言葉ごと抱きしめて唇を塞いだ、涙をいっぱいに溜めて睨みつける瞳が堪らない
……まったく、勘だけはいい
狭い厨房の隅で細い体を抱き締めて、息もできないほどのキスをしてやったんだ
. あなたの胸で眠りたい 9
~Cside~
「あ、新しい子が入ったのね?」
「ああ、この子は違うんですよ、チャンミン奥お願い」
「………あ、はい」
「あら残念ね、お相手をして貰えると思ったのに」
「申し訳ありません、今日のところは僕で我慢してください」
「仕方ないわね、で、ユノは?」
「今出てるんですよ、戻るのは少し遅くなります」
そう言ってニッコリと笑うテミンさんは、後ろ手に僕を店の奥へと促した
……誰、だろう
ユノ目当てでくるお客さんは確かに多いけど、その人達とは違う雰囲気がする気がする
「チャンミンこれ頼むよ」
「はい」
「店の奥から出ちゃダメだよ」
「あ、はい」
オーダーを受けたテミンさんが顔を覗かせて僕に念押しする
カウンターには出ちゃいけない事になってるんだよね、なんせまだ未成年だし……
気にはなるけど他のお客さんもパラパラとやってきてなんだか一気に忙しくなってしまった
ユノが軽めの食事もメニューに増やしてくれたから、僕の仕事も増えたんだ
……こんな僕でも少しでもユノの役に立てたら
と、店の前にタクシーが止まると、現れたのは見覚えのある長身のシルエット
………帰ってきた!!
「リナ?」
「まあユノ、遅かったわね」
「こっちに戻ったのか?」
「ふふ、だから来たのよ、ね?一杯やらない?」
店に入ってくるなり他には目もくれずその人の元へ向かうユノに、モヤモヤとした気持ちを抑えられない僕だったんだ
. あなたの胸で眠りたい 8
~Yside~
「いやぁ、来てくれて嬉しいよユノ」
「何言ってんだ、無事にここまでこぎつけたな」
「ああ、やっとだよ~楽しんで帰ってくれよな!!」
そう言って少々大袈裟に頭を下げるドンへ、変わらない笑顔に癒される
学生時代の悪友であるドンへが店を出すと知ったのは一年以上前の話
ランチ中心のビジネスマン向けのカフェとか、あいつらしい……
それからは陰ながら協力させて貰ったが、 初めての出店ということで色々なトラブルもあり、やっとの事で開店できることになった
ま、トラブルを招いているのは本人な気もするが(笑)
今日はほんの顔出しのつもり、うちの店からは車で15分ほどの距離にあり、挨拶だけ済ませたら店に戻る予定だった
「ユノさん、せっかくだから食べてってくださいよ!!」
「ん、ああ、ありがとう」
すぐに抜け出せるよう隅の方で飲んでいたのに、知った顔に見つかって大量の料理を渡されてしまった
……ふふ、チャンミンが見たら喜ぶだろうに
これをどうにか詰めてくれないかとスタッフにお願いして、俺はスマホを手に取った
『マスター!!ピンチ!!』
画面に表示されるテミンからのメッセージに思わず笑ってしまったが、こんな風に送ってくるのは珍しいこと
何かあったか……?
俺はドンへに早々に挨拶をすませると、滑り込むようにタクシーへと乗り込んだんだ
. あなたの胸で眠りたい 7
~Cside~
「で、マスターって家ではどんな感じなの?」
「………えっ?」
「あの人って得体が知れないっていうかさ、ミステリアスじゃん?」
そう言って僕に迫るテミンさんはパチンとウインクをした
今日はユノは知り合いの店の開店パーティに行っているから、店はテミンさんと僕とで店を開けることになったんだけど
まさかそんな事を聞いてくるなんて……
こんなに早い時間にはお客さんもいないし、二人でたわいもない話をしていたのに
「あれ?僕そんな変な質問した?」
「あ……いえ///」
「ふふん、マスターに口止めされてる?」
「そ、そんなことは!!」
「赤くなっちゃって可愛いなぁ、マスターがゾッコンなのわかる気がするよ~」
ゾ、ゾッコン!?…………ユノが僕に!?
「………そんなこと、ない、です///」
「そうかなぁ?チャンミンがいない間いつも以上に静かになっちゃってさ、タバコを持ったままこうボウっとしてさ」
「…………///」
「ああ見えてマスターってモテるから、そんなとこ見たの初めてだったんだよね」
そうだ、ユノってモテるんだ……
この店で働くようになってわかったのは、ユノ目当てでくるお客さんが多いこと
しかも綺麗な女の人ばかり
明らかにユノにターゲットを置いてるって態度がありありで、つい気になって見てしまうんだよね
………と、店の扉が開く不意に開く
入ってきたのは髪の長い綺麗な女の人
「「いらっしゃいませ」」
「ユノ、いる?」
そう言ってニッコリと笑うその人は、カツカツとヒールの音を立ててカウンターへと座ったんだ
. あなたの胸で眠りたい 6
~Yside~
潤んだ瞳で俺を見上げる愛おしい人、噛みつくように口付けて腕の中に閉じ込める
全く人の気も知らないで……
こいつが戻ってから未成年だったことがわかり、当たり前に自分を抑えていたのに
俺の努力が水の泡、だな
惚れちまったから大切に思わないわけはない、ましてやチャンミンの父親から挨拶までされてしまった
『どうぞ息子のことをよろしくお願いします』
そう言って頭を下げるスーツ姿の紳士は明らかに社長とわかる風格の人で
とても、チャンミンに似ていた……
「………ユノ?」
「ん?」
「………何か、別のこと考えてる」
「お前のこと考えてた」
「!!嘘………///」
「嘘じゃない」
「……バカ///」
拗ねたように顔を背けるくせに服の裾は掴んだままとか、どんだけ可愛いんだよ
……無自覚なのは罪なことだ
不安げに揺れるバンビアイに唇を落として、安心させるようにぴったりと体を重ねたんだ